2.受取り
 
 中村恵子はコンビニのオーナである。駅から少し離れた立地ではあるがそこそこの人の入りがあり、女手1人のコンビにオーナとしてもう10年になる。今日の昼ごはんの際には、夜の8時からのお漏らしさんと夕飯を一緒に食べる予定で2名分の夕飯の支度をしてから昼からのレジに立つ。恵子はあのお漏らしさんは必ずもう一度来てくれると信じていた。汚れたパンツも洗ってあげて今日は朝から天気がいいので、もうそろそろ乾いているでしょうと部屋の中での干しに変える。そしてまたコンビニの店長業務に勤しむ。
和也はいつものように会社の業務を定時を少し過ぎたくらいで終わらせた。これからあのコンビニに行くべきか、もう無視してしまうべきか、今日1日迷っていたが、答えは出ない。夜8時までにはまだ時間があるし、会社の近くの公園を散歩してみる。独身の和也は家に帰る前に外食の夕飯を食べて帰るのが普通だが、今日は夕食も食べる気がせずただ公園を散歩してみた。だが、回答は出てこない。あのコンビニに行って洗ってもらったであろうあのパンツを受けとりに行くか、もう無視して忘れてしまうかだ。だが、和也は汚れたお尻をきれいにしてくれたあの親切さが忘れられない。だが、男とも意識せずに下半身むき出しのままでお尻をきれいにしてくれたことへの恥ずかしさも忘れられない。和也は悩んだが、やはりもう一度お礼を言って、パンツを受け取って証拠品をもらってそれで終わりにするためにもう一度あのコンビニへいく事に決めた。今から移動すれば時間も丁度いい。和也はそう決めると近くの駅へと歩き出す。
恵子はコンビニで時計を見ては納得し、新しいお客様が来店されるとお漏らしさんかどうかを確かめていた。だが、コンビニも夕飯の買い物で7時前後はかなり忙しい。その忙しさが通り過ぎると8時近くになる。
和也がコンビニに着いたのは8時少し前だった。躊躇せずにコンビニの中へ入ると、恵子はすかさずこちらを見て挨拶をしてきた。
「あ、お世話になってます。すぐ、行きますから外で待っててください」
恵子は和也の顔をまっすぐに見てまるで店の取引先のように声をかけたので、和也はすぐに店を出て外で待っていた。恵子は切りのいいレジを終了すると後はバイトに任せて夕食をとるのが8時である。
「夕飯に行ってきますので、よろしくお願いね」
「はい、行ってらっしゃい」
恵子はそのまま、店を出るとお漏らしさんを探す。和也は店の前ではなく、店の横側に立っていた。
「あ、いたいた。お漏らしさん。さ、どうぞ」
「その言い方はやめて下さい」
「そ、そうね失礼しました。でも名前も聞いていなかったから。私は中村、中村恵子です」
「いいんです。すぐに帰りますから」
「そう言わないで、どうぞ、中に干してあるから。きれいになったわよ。あのパンツ。さ、その階段を上がってください。この2階が家なのよ」
恵子は和也を押しながら2階への階段を上がっていく。和也も仕方なく階段を上がったが、それはパンツを受け取るためだ。受け取ったらすぐに帰るつもりでいた。
2階まで上がると恵子は鍵を開けて中へと入っていくが和也はそのまま玄関で待っていた。しばらくしても戻ってこない恵子のために部屋の中を覗いて声をかけてみる。
「あの、すいません」
「あ、はいはい、丁度夕飯の支度ができたから食べて行って。夕飯の時間は9時までなのよ。あなたも独身でしょ。今日は私の手料理をご馳走してあげる」
「い、いえ遠慮します。すぐに帰りますから」
「だから夕飯を一緒に食べたらきれいに洗ったパンツを返すわよ。というかあそこに干してあるけど」
和也は部屋の奥を覗いてみると確かに自分のらしいパンツが干してあるのを見た。
恵子はそのまま和也を部屋へと通して夕飯の支度ができているテーブルへと案内した。パンツを返して欲しさに部屋に上がったが、そこには手料理のおいしそうなにおいが立ち込めていた。
「さ、今日は煮込みハンバーグよ。1名で食べるより2名で食べようよ。お漏らしさん」
「その言葉はやめて欲しいな」
「だって、まだ名前も聞いていないから」
「私は鈴木和也です。昨日は初めての人間ドッグでバリウムと下剤を飲まされて、もう大丈夫と思ったけど、昨日は寒いこともあって歩いているうちにトイレに行きたくなって、それでちょっと躓いたついでに力が入ってしまってああなってしまったんだ。そういえば、昨日はいろいろありがとうございました」
「あら、いいのよ、お役に立ててよかったわ。お礼のつもりなら、一緒に夕飯を食べて行ってください。まだでしょ、夕飯は。それに夕飯を待っている人もいないのよね。私と同じで」
「ええ、そうですけど」
「じゃ、決まり、さめないうちに食べましょう」
和也は人見知りしない明るい恵子に安心感を覚え、夕飯1回のご馳走くらいはいいだろうという気になり、2名は一緒に雑談をしながら夕飯を食べ始めた。
お漏らしさんと呼ばれることもなくなり、多少は恵子のこともわかって親密感は沸いたが、和也はやはり大の大人がお漏らしをしたお尻をきれいにしてもらった恥ずかしさが吹っ切れない。早く証拠のパンツを返してもらって引き上げようと思っていると、恵子のほうから話しかけた。
「あらもうこんな時間、もうひと働きしなきゃ。コンビニのオーナも大変なのよ。これ、パンツね、きれいでしょ。まだ何回も穿けるわよ、大事にしてね」
和也は黙って受け取るとかばんに押し込んで、夕飯のお礼を言うと、帰る支度を始める。
「今日はまだ仕事が残っているけど、今度の土曜日は非番なの、また、遊びにいらっしゃいよ。今度はお昼をご馳走するわ」
「いえ、もう結構です。今日はご馳走さまでした」
「いいわよ、いらっしゃいよ、お漏らしさん。お漏らしさんにふさわしいイイコトをしてあげるわ」
「もう、その言い方はやめて下さいよ」
「ごめんなさい。でもお漏らしさんにはふさわしいイイコトよ。今度の土曜日のお昼の12時に来てくれる。お昼を作って待ってるから」
「そのふさわしいイイコトってなんですか」
「内緒よ。お昼ごはんを食べながら教えてあげる。興味があったら来てね。きっと来てね。あなたなら来てくれると信じているから、じゃ、今日はさようなら」
「じゃ、ご馳走様でした」
和也はもうこれでこの人とはお別れで、お漏らしのことを知っている人とは会うこともなくなると思っていたのに、また誘ってくる恵子に不思議な魅力も感じていた。だが、お漏らしの恥ずかしさを知っている人とはもう会わないと決めていた和也の心にはあの人の魅力がどんどん大きくなっているのと、次のお漏らしさんにふさわしいいいこととはいったいどんなことなのかを考えると、和也は今度の土曜日にも行ってみようという思いが出てくるのは不思議ではなかった。
 
大人の赤ちゃん返り
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