蘇り

翌朝、和也は母親の大きな声に起こされた。身体的な疲れ、精神的な疲れ、そして元の自分の家とは言え、それまでの空気が変わったことから、母親の心配通り、和夫はおねしょをしてしまった。とはいえ、おむつをしていたので、布団に漏れることはなかった。お腹のところに掛けていたタオルケットの中でおしっこはそれほど冷たくならずに和夫の睡眠を妨害はしなかった。そこに母親が手を差し伸べ、ぐっしょり濡れたおむつに奇声を上げたのだった。
「おねーしょ」
オネショと分かる言葉だったが、大きなその声は3人姉妹を呼び出すには十分な大きさだった。
「和夫、また、オネショして仕方無い子ね」
母親は和夫のおむつを外すと和夫の濡れた股をきれいに拭いていく。そこに由香と由紀が部屋の中に入ってきた。
「和夫、本当にオネショしちゃったの?」
和夫はまだ、十分目がさめないうちにおむつを外され汚れた下半身をきれいにされているところを見られてしまった。そこには一番の口うるさい三女の愛の姿はなかった。一番若い愛にはまだ、朝寝坊の癖が抜けてない。
「和夫、やっぱり昨日の話は本格的にやらないとだめね」
「昨日の話?」
「そうよ。女の子の赤ちゃんとして育て直しの話よ」
「和夫、うんちは大丈夫なの」
「大丈夫だよ。トイレにちゃんと行くから」
「行く必要ないわよ」
「もう、赤ちゃんなんだから、うんちもおしっこもおむつにしなさい。女が4人もいるんだから皆で可愛がってあげるから」
「そうだね、和夫、心配しないでいいよ。オネショのおしっこもきれいになったから、うんちもしたくなったらしていいんだよ」
「そんなこと言ったって」
「さ、愛も起こして朝ご飯を食べてお父さんのお墓参りに行こう」
「そうしましょう」
昨日の夜、母親は和夫を亡き夫としてセックスの相手としていたが、一夜明ければそんな雰囲気は微塵も無い。母親は和夫を居るはずの無い4女として、それも赤ん坊として扱い始める。
和夫は新しいおむつに愛の古着を着せられた。テーシャツにスカートだけだ。朝ご飯が出来上がる頃には愛も起きてきて5人で一緒に食べた。話題はやはり、和夫のオネショから始まる。
「和夫がやっぱりオネショしたわよ」
そんなことは知らなかった愛はやっぱりという態度で和夫を見るが、そこには赤ちゃんを見るようなやさしさもある。普段は厳しい口調の愛も本当の赤ちゃんにはやさしく接することができる母性本能が一番多いのかもしれない。
「和夫、おむつは当然として、女の子の赤ちゃんよね。でも体は大人だから、そのままじゃ外に出るには私達も恥ずかしいわ」
「例えば?」
「そうね、ティーシャツの中にやはりブラジャの線がないのはおかしいわ」
「そう、ノーブラの女性は日本ではいないものね。いくらナインちゃんでもブラはしてるわよ」
「それにスカートから毛の生えている足が出ているのもねえ」
「それにスッピンじゃ、髭もあるし」
「でも、和夫は髭も濃くないし、足の毛もそんな多くはないわ」
「だから、少しお化粧したり、ストッキングを穿いたりすれば十分隠れるわよ」
「そうね、そうしましょう。かつらもあるわよね」
「うん、あるある」
「それから、和夫これから毎日牛乳は1リットル飲みなさい。そうすれば、おしっこやうんちもほんのりミルクよ。うんちの臭いや色も少しは薄くなるわ。これはおむつを替えてもらう人へのモラルよ」
「あの、オネショは本当に偶然だよ。疲れもあったし、空気も変わったし、だから」
「だから、和夫はまだ、赤ちゃんということでしょう。わかった?」
「でも」
何を言っても4人の女性には勝てそうにもなかった。昔の事実と今朝の事実は和夫におむつを当てる十分な理由になっていた。
「愛、父さんのお墓参りだから和夫のこのティーシャツ姿はどうかな?」
「母さん、といっても何を着させたらいいかしら」
「赤ちゃんとは言っても大きなロンパースみたいなものは無いし」
「そうね、愛のセーラ服がいいわ」
「あら、いいわね、父さんも4人目の女の子のセーラ服姿なら喜ぶわ」
「かつらは黒よね」
「セーラ服に茶色のかつらはだめよ」
「大丈夫。黒もあるわよ」
「そう、よかった」
「じゃ、私は朝ご飯の後片付けをするから、由紀と愛は和夫の着替え、母さんはお墓用の花と供え物を用意して。そう、車は愛が運転してくれるわね」
「いいわよ」
「じゃ、行動開始」
和夫はそのまま、服を脱がされ、おむつ一枚にされるとブラジャをさせられた。そして愛のセーラ服を着させられると、かつらをかぶせられ、薄い化粧もさせられた。夏にかつらは暑苦しかったが、ストッキングがさらに和夫の体を包む。
「よし、完成、今度は私達が用意してくるから、和夫は母さんと由香姉さんにその姿を見てもらってきなさい」
そうは言っても和夫はそのまま三面鏡の前で自分の顔や姿を見ていた。かわいらしくはないが、それなりの女の子になった姿を見ているとだんだん気持ちも変化してくる。セーラ服のスカートを上げてみると、そこにはおむつがあった。夏なのでパンティストッキングではなく、太ももの付け根までのストッキングの上にはおむつカバーが見える。オネショの後、うんちをする機会がないまま、出かける仕度をさせられたことからか、便意も引っ込んでしまっていた。
「行くわよ」
愛の声がかかった。仕方なく、和夫も外に出てみると、4人が和夫を取り囲む。
「かわいいわ、よく似合うわよ。そのセーラ服」
「カメラある?」
「あ、今取って来る」
そんな風にはしゃいでいると隣に住むおばさんが庭に入ってきた。
「あーら、皆でお出かけ?この方は?」
「私の友達よ」
「あらそう、和夫ちゃんは?」
「和夫は東京に居るわ、今年は帰って来れないの」
「あらそう、これからお墓参り?」
「そう、女5人で父さんに会いに行ってくるわ」
隣のおばさんも和夫の女装姿には全然気づかずに行ってしまった。皆が車に乗ると愛は車を出した。30分ほどでお墓に着く。お墓では、お墓をきれいにし、水を十分に上げ、お供え物をきれいに並べた後、4女の和夫の報告を行った。和夫は父さんが生きていれば少しは男同士で通じ合えただろうなどと思うが、死んだ人は生き返らない。心の中の父さんと会話することが墓参りの意味なのだろうかと真剣に考えた。
「さ、父さんに和夫の女の子としての育て直しも報告したし、帰ろうか?」
「そうね、ディスカウントストアで紙おむつを買わなきゃ」
「そうよね、毎日オネショに昼間もオモラシがあるだろうから、そしたらおむつが足らないから」
「和夫、おむつ大丈夫?濡れてない?うんちは?」
「大丈夫だよ」
そうは言うものの、オネショをしてしまったのは明け方と思う。それからずっとおしっこはしていないし、おねしょ事件でうんちもしていない和夫には昼近くにもなれば次の尿意が自然と来ていて不思議ではなかった。幸いなことに便意は今朝のオネショ事件以来引っ込んでいる。追い討ちを掛けるように車の冷房がきつかったが、お墓参り中は少し落ち着いていた。また、車に乗りディスカウントストアまでが辛かったが、ディスカウントストアはやはり冷房が効いており、着くなり女性たちは皆でトイレに行ってしまう。取り残された和夫もトイレに行きたいが、この格好で男性用には入れないし、カと言って母親や姉妹達もいる女性用トイレには入れない。仮に姉妹達が居なくてもやはり、自分は男だという面子から女性用トイレには入れない。しかし尿意はかなり強くなっている。
「和夫、おむつ濡れていたら、ここに赤ちゃん用のおむつ替えのベッドがあるからここで替えてあげるわよ。替えのおむつも持ってきているから」
周りにも聞こえるくらいの声で平気に言う愛の言葉は和夫を真っ赤にさせる。恥ずかしさから和夫はトイレの前から立ち去るが、小声で「あの子おむつしているのかしら」
などと聞こえてきたり、皆が見ている視線を感じる。
「さ、和夫の紙おむつを買いましょう」
皆が揃うと、和夫を囲んで紙おむつ売り場に行く。
「やっぱり男用ね」
「そうね、女の子の赤ちゃんでも付いているものは付いているし、出るものは前のほうに出るから漏れるより、いいわよね。だからこれにしましょう」
愛は男性用の紙おむつを指差すと、和夫に取るように言う。和夫は仕方なく手にとるとレジに向かう。
「ちょっと待って」
「哺乳瓶でしょ。コナミルクでしょ。おしゃぶりでしょ。和夫、これも一緒にね、お金は私が払うから。でも自分の物だから自分で買いなさい」
レジの前でそういう愛の言葉に店員は和夫を不思議そうにみる。
「これをですか?」
店員はつい、不思議がって和夫に聞くが、和夫は返事をできない。それより強い尿意に耐えるほうが先決だった。
「そうです。この子なの、おいくらですか」
店員はレジを打つと相変わらず不思議そうに和夫を見つめながら合計金額を出す。
「あのすいません、今、布おむつは売っています?」
「赤ちゃん用でしたら洋服売り場にあります」
「いえ、この子がおむつを当てるのでもう少し大きなものはありますか?」
「この方ですか?」
「そうなんです。今朝もオネショしたり、今もおむつを当てているんですけど、紙おむつはやはり不経済でしょ」
「でも、この紙おむつは男性用ですけどよろしいですか?」
「ええ、これは年老いた父さん用です」
いつ来たのか母親が助け舟をだした。しかし、昨日も裏切られた和夫は安心できずにいる。
「この子に布おむつを買ってあげたいので探しているんです」
やはり助けてくれているようで母親も和夫を赤ちゃん扱いする。和夫はその場から逃げたいと思いつつも愛が腕を絡めている。そして強い尿意であまり力をいれて動こうとすると出ちゃいそうなので和夫は動けない。
「大人用のおむつでしたら、介護コーナにあるかもしれません。確認しましょうか」
「いえ、大丈夫です。では介護コーナに行ってみます」
レジで支払いを済ますと、介護コーナに移動した。そこには介護用のいろんなものが売っていたし、確かにおむつコーナもあった。
「あったわ。あまりかわいらしくないけど、和夫のおむつは大分疲れているし、替えのも必要でしょ。これがいいかな」
愛は、3点ほど種類があるおむつカバーの中から選ぶと和夫の服の上から当ててきた。
「サイズは大丈夫かな。でもオネショするからおむつの枚数を増やしたいから少し大きめのほうがいいわ」
「いらっしゃいませ」
「こちらの方が介護を必要ですか」
「そうなのよ。今朝もオネショするし、今もおむつをしているの」
母親は自分のものと思われるのが嫌なため、和夫のおむつということを強調する。
「そうですか、こちらでしたら少し枚数を多くしてもカバーが少し伸びますので大丈夫かと思います」
「そうですか、ではこの色違いのカバーで2枚と、おむつはあります?」
「ええ、こちらも柄もの、白物と揃っています」
「じゃ、両方ともいただくわ。この子のおむつの替えも大分必要なので」
「ありがとう、ございます」
介護コーナの店員はさすがに慣れているようで、丁寧に不信そうな顔もみせないで対応してくれた。
「私さ、和夫にロリータファッションをさせたいな」
介護コーナを後にしてゆっくり歩き始めると長女の由香が言い始めた。
「そうね、いいかもね。深田京子だっけ、この前の「上げ妻物語」でいろんなロリータファッションの洋服きていたでしょ。私も10年若かったら着たかったわ」
「そうね、私達はもう着れないし。私達の代わりに和夫に着させようよ」
「賛成」
5人は女性用売り場に着た。一時期のブームも終わり、ブランドもののロリータファッションの洋服はそれなりに高い金額であるが、ようやくディスカウントストアにも台湾や中国製といった手ごろな洋服が陳列されていた。
和夫を除いて、4人は数種類のロリータファッションを見てはああだ、こうだと話している。和夫は冷房が効いた中で強い尿意と戦いながら立っているのがやっとだった。
「和夫、これにしよ」
ピンクと白地の布でとってもかわいらしくできた洋服だった。スカートの下には何十にも白いレースのような生地がありスカートがとてもかわいらしくふわっと膨れ上がっている。
「これで買い物は終わりかな」
「そうね、私、昼から約束があるの」
「私もよ」
「じゃ、ここでお昼を食べて駅まで送っていってあげるわ。私は母さんと和夫を乗せて帰るから」
「そう、じゃ由香姉さん、そうしてくれる?
「ええ、いいわよ」
「由香、私も昼から寄り合いがあるのよ。私は公民館で下ろしてくれる?」
「ええ、いいわよ。和夫の世話は私がするから」
5人はディスカウントストア内で軽食をとることにした。5人が席に着き、オーダすると、強めの冷房のせいか、由香を覗いて皆またトイレに行ってしまった。同時に和夫の尿意はそろそろ限界だった。和夫は由香に尿意を告げた。
「由香姉さん、おしっこ、もう限界」
「大丈夫、おむつの中にしていいのよ」
由香は和夫の肩をだき、背中をさすって和夫にやさしく言った。
「ここじゃ、男性用トイレにも入れないし、カと言って女性用トイレにも和夫は入れないのでしょ。大丈夫だから、下を向いて早くしましょ。皆が帰ってくる前に出していいのよ」
和夫は、皆が帰って着る前にしてしまおうという言葉には賛成だった。皆が揃ったらまた、どんな会話になるかわからないし、何を言われるか分からない。そんな状態でもし、皆の前でオモラシをするよりは由香姉さんに抱いてもらいながらのほうがありがたい。
由香は、和夫の肩を抱いたり、背中をさすってあげた。
「大丈夫。皆には黙っていてあげるから早くしましょう。おむつしてるから漏れないから大丈夫よ」
和夫は今しかないと思い、由香に持たれながらふんばった。温かいおしっこが和夫の下半身に流れ出ていた。大分我慢していたので出し終わると「ホー」と一息ついた。その直後だった。
「和夫、おむつ大丈夫、濡れてない」
ずばずばと言う愛が戻ってくるなり言ってきた。
「ええ、座って見えないから、今、おむつを触ってみたけど濡れてないわ」
今度は由香姉さんが見方してくれた。しかし、昨日も先頭だって仕切っていたのは由香と思うと安心もできないが、由香のおかげで和夫はオモラシができ一安心していた。
そうこうする間に軽食が届き、食べ終わる頃には、何時までにここへいかなきゃという会話になって皆は早々に車に戻った。和夫もオモラシはして楽になったが、そろそろ濡れたおむつを取り換えてほしかった。濡れたおむつが和夫の腹を冷えさせそれに冷房が効き、さらに軽食とはいえ、胃袋に入った食物は胃と腸を刺激していた。愛と由紀を駅で降ろし、母さんを公民館で下ろすと由香と和夫だけで自宅に向かった。
「ユカ・ね・え・さ・ん」
「どうしたの、和夫」
運転しながら由香は和夫の異変ぶりに気づいた。和夫は冷や汗をかいてしきりに我慢している様子だった。
「和夫、もしかしてまた、おしっこ?」
「ちがう」
「じゃ、どうしたの」
「大きいほう」
「え、仕方無いわね。冷えたんでしょ。それに朝から出ていないのでしょ。大丈夫よ。
おむつの中にしていいのよ」
「だって」
「大丈夫。もうすぐ家に着くからそしたらすぐにきれいにしてあげるわ。もうすこしといっても15分くらいかかるわ。もし我慢できないなら出していいのよ」
由香は車を止めると助手席の和夫の肩に手をかけた。
「本当にいいの」
「大丈夫よ、こっちに寄りかかって早く楽になりなさい」
その言葉が終わるや否や和夫はすごい音を出しておむつを汚していた。しばらくすると和夫は顔を上げた。
「もう、大丈夫?全部出た?」
和夫は由香の顔を恥ずかしそうに見ながら頷いた。由香も頷くと何も無かったように車を運転し始めた。和夫はおしっこだけでなく、おしりにあるぬるぬるも感じながら車の揺れに体を任せていた。由香は何も言わず少し車の窓を開けた。やはり匂うのだろう。だが、由香は何も言わずに家へと向かった。
「ちょっと、待ってて」
家へ着くと、由香は車を降りて助手席側にくると和夫を下ろし、手を組んで家へと導いた。和夫の歩き方はお尻にあるものを意識してか歩き方がぎこちない。
「さ、そこに横になって、今きれいにしてあげるから」
由香は替えのおむつを用意すると、和夫のスカートを捲りおむつカバーを外していく。そこにはおしっこの臭いとうんちの臭いがしている。
「くちゃい、くちゃい。でも大丈夫よ。今すぐにきれいになるよ」
赤チャンをあやすようにちっとも怒らずに由香は和夫の汚れたおむつを替えていった。
「汚れたおむつはこうしてと。おしぼりできれいに拭きますよ。はいシッカロールね。もうすこしこのままにしていたらおむつ被れになっちゃいますね。早く言ってくれてかずちゃんは御利巧さんですね」
和夫は由香ねえさんがこんな一面を持っているなんて初めて知った。昔はもっと怒って和夫のおむつを替えてくれたことを覚えている。新しいおむつに替えてくれて、汚れたおむつを片付けると何も無かったように和夫に微笑みかける由香がいた。和夫は気持ち悪いとも思いつつ由香を見ていた。
「和夫、ロリータファッションに着替えようか」
「いいよ」
和夫の汚いおむつを替えてくれたことから由香に素直になっていた。由香のなすがままにセーラ服を脱ぎ、ロリータファッションの洋服を着させて貰った。
「かわいいわ。私も十年若かったら、着たかったわ」
 

大人の赤ちゃん返り
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