夫の願い

(ラブ・カバ−)


芥川秀一

その年の夏休み、和也と洋子は夏休みを同じ時期にとった。しかし共働きで洋子は看護婦を続けていて、しかも和也は仕事が忙しくなかなか夏休みの計画も立てられないまま夏休みに入った。最初の夏休みの日はゆっくり朝寝坊をして二人が起きたのはお昼近かった。二人の通勤にも便利なところに賃貸マンションを借りていたが、そこは車も少なくよく眠れた。あり合わせの昼食をしてゆっくりしている時だった。
「和也、夏休み、どこかへ遊びに行こうね。お互い忙しくて旅行なんかの予約はおろか計画もなかったね」
「ちょっと忙しくて、どっかに遊びに行きたいとも思わなかったよ。今年は。だいぶストレスが溜まっているみたいだ。いやな上司との関係もあるしさ」
「そうね、私も看護婦に少し慣れてきたからいろいろ仕事があって大変だったわ。でも根が明るいから私は大丈夫。和夫は?」
「あんまり大丈夫じゃないな。ストレスからかな。体がだるい」
「えー、でも今日はゆっくりしましょうね。そうしてどこかに遊びに行けばストレスも無くなるし、体もすっきりするよ」
そんな会話の中で和也はいきなり洋子を抱きしめた。
「和也、まだ昼間よ」
「いいじゃないか。最近夜勤も多かったし、俺も夜遅かったりでこのところやっていないじゃないか」
二人の両親は初孫を期待していたが、妊娠の兆しはまだ無い。もっとも式を挙げてからそろそろ半年という期間だから妊娠していなくても不思議はない。
和也は空ろな目で洋子をベッドルームに連れて行くと洋子の衣服を脱がし始めた。真夏のためさっきまで入れていたエアコンのおかげで丁度いい。洋子の上半身のTシャツを脱がしブラジャを外すと和也は洋子をベッドに誘った。
「洋子、そこへ座って」
「ベッドの上に座るの?」
「そう」
洋子がベッドの上に正座するのを見ると和也は洋子の膝に頭を置いて横になった。
「ようく、見えるよ、やわらかい」
和也は洋子のオッパイを握り締めそして乳首を吸う。
「赤ちゃんみたい」
洋子は今までの和也とのセックスの仕方の違いに戸惑いながらも和也にオッパイを上げる母親のように振舞った。和也は何も言わず、オッパイを握り締め、目を閉じて乳首を吸い続けている。
「洋子、少し甘えさせて」
「いいわよ、ストレスが多かったのよね」
和也のいつもと違う雰囲気に洋子は和也にやさしくしてあげた。丁度病院で初めて嫌がる和也におむつをしてあげた時のように。そして和也の頭をなでていた。
「和也、オッパイは出ないから本当のミルクをあげましょうか?そして病院にいたときのようにおむつをしましょうか?赤ちゃんのように甘えていいのよ」
冗談半分で洋子は和也を赤ちゃん扱いした。和也は何も言わずにオッパイを吸っている。
「洋子、すこし甘えさせて」
「わかったわよ。和也は赤ちゃんだからおむつもしましょうね」
「うん、そうして」
「冗談よ」
和也は答えない。洋子は軽い気持ちの冗談で言ったつもりだった。和也は真剣な目で洋子を見つめている。
「まじ?」
洋子は冗談のつもりがまじめに受け入れようとしている和也の表情に目を疑った。
「あのころが懐かしいんだ」
「あの頃って」
「怪我で入院して動けなくて。そしていやいやでもおむつをされただろ」
「おむつが忘れないの?でも、家にはおむつは無いわ」
「そう、君がおむつを替えてくれたあの頃が一番よかった。君のおむつの取り替え方が一番やさしかったよ」
「そう?でも、皆同じように研修を受けたから同じと思うけど。そしてさ、病院だから怪我の人や病気の人、そしてお年寄りは皆おむつだけど、和也は健康でしょ」
「だからストレスかな。体がだるい。あの頃のようにしてくれる?」
「でも、あれは病院でやむを得ずおむつをしていたのよ」
「それはそうだけど、だめ?」
和也はがっかりしたように目をつむりため息を付いた。そんな和也を見ると洋子は毎日病院でしていることだから別に何でもない。でも健康な人におむつを当てるのは?と悩むが今、目の前の和也は精神的に疲れている病人だと考える。
「いいわよ、和也は少し疲れているみたいだから、おむつしてあげる。ミルクもあげる。オッパイもあげるわよ。赤ちゃんみたく可愛がってあげるね。心配しなくていいよ。おむつやミルクも用意してあげるからね。病院へ行けばおむつやおむつカバーも売っているから買いに行こう。だから元気出してね」
和夫は返事をしない。洋子は面食らっていたが和也の要求通りにしようと言うのに返事をしない和也を不思議に思う。
「和也、和ちゃん、病院におむつを買いにいくから元気だそうよ」
オッパイを吸い続ける和也の顔を覗きこみながら洋子は念を押した。
「洋子、今日はそれでいいけど」
「今日は病院におむつを買いに行って、帰ってきたらおむつをしてあげるわよ。そしてミルクも上げる。涎掛けもしてあげるよ。それでうんと甘えてくれていいのよ。それとも他にも何かあるの?」
「今日はそれでいいけど、病院のおむつカバーは殺風景じゃない」
「それは医療用だから可愛くはないけど」
「赤ちゃんみたいなカバーがいいな」
「赤ちゃんみたいな大人用のおむつカバーは売ってないでしょ。それは我慢してね」
「でも、インタネットで探したらそういうのは通信販売で売っているんだよ」
急に元気な言い方になった和也にびっくりしながら洋子は頷く。
「分かったわよ、それじゃ、買い物して帰ってきたら夕飯後に見せて。かわいいおむつカバーのネット販売を」
「本当?」
「本当よ、私が選んであげる。赤ちゃんの和也に似あうおむつカバーは黄色かな、それとも動物絵柄かな?それは見せてもらったときにお楽しみにしましょう。私の病院だとおむつを買うところを誰かに見られるといやだから、別の病院、そう、慶応病院がいいわ。あそこは大きな病院だからおむつもいろいろ売っているはずよ。それともディスカウントストアで老人用の紙おむつがいい?」
「やっぱり、病院でしてもらった布がいいな」
「そうね、布おむつね。最近は赤ちゃんには当てないみたいね。赤ちゃんはほとんど紙おむつね。そうだ、ネットで買うのもいいかもしれないけど、私が作ってあげようか。とびきりかわいいおむつカバーを」
「本当。それはいつ出来る」
「いつ、と言われても型紙もないし、どういう風に作ったいいかわからないわ。そういうものは雑誌にも載っていないし」
「じゃ、作れないじゃない」
「でも、裁縫は得意なのよ。何でもつくれるよ。でもやっぱり、型紙とか見本がないと作れないわ。最初はネットで買いましょう。その後は私が作ってあげる。そのほうが経済的でしょ。生地の値段にもよるけど裁縫代はただよ。和也のために作ってあげる。でもまずは1つ見本として欲しいわね」
和也の入院した病院では紙おむつと布おむつを使い分けていた。単発的に1日や2日の場合には紙おむつを。1週間以上の入院とか、寝たきり老人にはやはり肌触りがいい布おむつをすることになっていた。和也も骨にひびが入り2週間以上のおむつになったので布おむつを当てられていた。
「病院と同じ布がいいけど、カバーは可愛やつがいい」
「わかったわよ。でも可愛おむつカバーが届くまでは医療用よ。それから布おむつは洗濯も大変だから紙おむつも準備しましょうね」
洋子は和也の症状がおかしいのでおむつは余分にあったほうがいいと考えた。しかし、精神的に少し疲れていてストレスが溜まっているだけだから精神科医は不要と判断した。医者はもう少し様子をみてからでもおかしくない。
和也は車を運転してまずは慶応病院に行った。東京の西郊外にある和也のマンションからは国道16号に乗れば15分ほどで慶応病院が見えてくる。まるで高速道路のように16号を飛ばせばすぐだ。慶応病院が見えてしばらくした後のインターで和也は16号を降りた。そこからは信号を三つ目で慶応病院入口の看板が見えてきた。
病院の駐車場に車を入れ入口を入るが、土曜日ということもあって人はあまりいない。暑い外に比べて病院の中は涼しい。しばらく歩くと汗も引いていく。ようやく売店が見えて来た。売店でのおむつの買い物は洋子が全て判断して買った。医療用で地味な薄青いおむつカバーと真っ白な2種類しか販売されていない。多少でも色のある方を選び和也に確認をした。和也は黙って頷いただけだった。和也のウェストのサイズを確認した後は洋子がおむつによる膨らみを計算しサイズを選んだ。和也は標準より少し痩せている。余裕を持って「L」のおむつカバーを選んだ。布おむつは20枚入り、50枚入りの2種類があった。洋子は和也の一時的な感情からのおむつだろうから20枚入りで十分かと思う。しかし、本当に和也が赤ちゃんのように振舞うとするとすぐにそれでは足らないこともわかっている。悩んでいると和也が50枚入りの方に指を指してきた。
ディスカウントストアでも老人用の紙おむつも買った。その後は普通の夕食の買い物をして二人はマンションに帰った。
「和也、今お風呂仕度するから、先にお風呂入ってね」
「洋子も一緒に入ろうか」
「夕飯の支度が先でしょ。それに狭いからいやよ。そのかわり後でネットサーフィンして和也の買い物を手伝ってあげる」
「はーい」
少し元気がでたのか、和也は子供のような返事をしてテレビを見始めた。それから風呂に入いり久しぶりにゆっくりと夕食を二人で食べた。後片付けを終わらせリビングに戻った洋子は買ってきた紙おむつや医療用おむつを開けてみている和也を見た。
「そうね、おむつをしましょうか。そのソファに横になって」
和也は素直にそのままソファに横になった。洋子は和也を心配しつつもまずは本人の希望を叶えてあげることが大事と考えおむつを当ててあげる準備をした。
「紙おむつがいい、それとも布?」
「病院と一緒がいい」
「はい、そうね、布のほうが肌触りもいいし。分かったわよ。おとなしくしていてね」
洋子は和也のとなりに座り、おむつとおむつカバーを用意した。和也はおとなしく天井を見上げたままだ。
「和也、ズボンを脱いで」
「全部やって」
「仕方ないわね」
和也は風呂から上がって既にパジャマに着替えていた。洋子はパジャマのズボンに手を掛けて脱がそうとする。
「お尻上げて。一人では無理よ」
「全部やってよ」
「そんなこと言ったって。和也を一人では持ち上げられないでしょ」
「病院ではやってくれただろ」
「病院で看護婦二人ならできるけど。そうでない場合は浴衣とかならできるけど。ソファの上だと横に回転することもできないでしょ。無理よ」
病院では患者をベッドの上で横に回転させ、パジャマのズボンをずらしてまたあお向けにしておむつを代えるのが通常でこの場合には1人でも大丈夫だ。重症の場合で回転できない場合などは看護婦2人以上で1人が患者の下半身を持ち上げておむつを交換する。ソファの上の和也を回転させることはできない。
「わかったよ」
むっとしながらお尻を持ち上げた和也だったが、この態度は洋子にはき気に食わない。やさしくしていればいい気になってという感じだ。
「早くしてよ。疲れちゃうよ」
「なによ、いい気になって。一人で大人のおむつを代えるこっちの気持ちも考えてよ」
洋子はついに和也の態度に怒ってしまった。和也は洋子なら甘えられると思っていい気になっていたこともわかっていた。
「ごめんよ。洋子の言う通りにするから」
「じゃ、もう一度お尻を上げて」
洋子は怒った感じで厳しく和也に言う。
「言う通りにするからやさしくして。でも赤ちゃんや病院ではされるがままだよね」
和也はまた空ろな目で天井を見上げる。洋子は和也のストレスを気遣っておむつをしてあげることを思い出し、気を取り直した。しかし、和也のお尻を持ち上げてパジャのズボンを脱がすのは大変だ。洋子は何かいい手がないものかと思う。
「和也、寝るときは浴衣にしようか。そうすればおむつを代えるのにズボンとは違って一人でも大丈夫よ」
「浴衣はある?」
「無いわ。買うのも勿体ないし。それに昼間もおむつするの?」
「そうだよ」
洋子は当然と昼も夜もおむつをすると言う和也にびっくりもするが、そのたびにズボンを脱がせる力仕事があると思うとがっかりする。共働きとはいえ、近い将来はマンションも買いたいし、しっかり貯金もしているので今回のことであまりお金は使いたくない。ただでさえ、おむつやおむつカバーで結構お金を使っている。そこは和也も洋子もお互いに分かっていて今回のことも最小限の出費で抑えようとしている。
「和也、経済的には私がおむつやおむつカバーを作るとかで節約もするけど、さらに浴衣とかも買うのは勿体じゃない」
「それはそう思う。節約には協力するよ」
「でも浴衣じゃないとおむつを代えるのが大変よ。だからお尻を上げるようにしてよ」
「わかるけど。それじゃ甘えている気分にならないな」
「贅沢言って。本当に仕方ないんだから」
「そう、言っても他にアイディアは無いし」
「そうだ、私のネグリジャを着る?」
洋子は新婚早々ネグリジェを着て寝ていたが、寝相はあまりいい方ではないため捲れていることも多く、それがわかってから洋子はネグリジェを着ていない。和也は食べ物にはうるさいしリクエストもよく出すが、着る物には無頓着だ。会社に行くときのスーツやネクタイも洋子の言うままだ。普段着も洋子が何も言わないといつも同じものを着ているほどだ。
「ネグリジェ?何でも洋子の言うことを聞くから甘えさして」
「本当、何でも私の言うことを聞くわね。いいわよ、甘えさしてあげるから、じゃネグリジェにしましょう」
和也は着るものには無頓着なので洋子の気が済むようにしてあげるつもりだ。その代わり少し精神的に安らぎがほしかった。
「和也、本当に昼間もおむつするの」
「だめ?」
「ううん、だめじゃなくてそうするとやっぱりズボンを脱がすのは大変でしょ」
「ネットでは赤ちゃん用のロンパースも売っていたよ」
「これ以上の出費は止めようよ、その代わりそういう物なら赤ちゃん用の雑誌を買ってきて型紙さえ手に入れば作ってあげる自身はあるから」
「来月の僕の小遣いで買おうかな?」
「それはそれでもいいけど、話を戻して昼間も赤ちゃんのようにおむつをするのなら代えるのに大変だから」
「だからロンパース」
「すぐには無理でしょ。だから私のスカートを穿こうか。それならおむつ代えも楽でしょ」
「そういうこと、別にいいよ」
あまりにもスカートを穿くことを素直に受け入れた和也を洋子は不信に思うが、それほど赤ちゃんのようにしてほしいのならそれも仕方ない。洋子は冗談半分の気持ちもあったが、やはり和也は本気らしい。
「和也、おむつしてスカートを穿くのね。和也は女の子の赤ちゃんね。かわいがっちゃうわよ。これは本当の赤ちゃんができる前の予行演習ね」
洋子は寝室に行くと箪笥から新婚時に着たネグリジェと、学生時代の派手で短いスカートを持ってきた。
「和也、ネグリジェとスカートよ。ネグリジェは自分で起きて着てね」
和也は仕方ないと思い、立ち上がりパジャを脱ぐと洋子の出したネグリジェを着た。
「丁度いいわね」
ネグリジェは和也の膝上の丈だった。洋子は和也より10cm位身長が低い。洋子が着ていたときのネグリジェは膝下位の上品な感じであったが、和也がそれを着ると膝上になってしまう。しかし、そのネグリジェは大柄ではない和也の体に短いがぴったりだった。
「パンツも脱いで」
和也はネグリジェを捲るとパンツを脱いだ。それを洋子に渡すとまたソファに横になった。
「準備OK」
「ちぇっと待ってよ。赤ちゃんはおむつを敷いた上に横になるものよ、そうでないとまたお尻を浮かせてもらうわよ」
「そうか、なるほど」
和也はまた立ち上がった。洋子はソファの上におむつカバーを広げ、その上に布おむつを敷いていく。3枚くらいかな、縦と横に敷いて。いいわよ、ここにお尻をついて横になってくれる」
和也はネグリジェを捲ると、おとなしく洋子の言う通りにおむつの上にお尻を着いた。
「いい子ね、和也は。こうしておむつをして、おむつカバーをはめて」
洋子は自分の動作を口で確かめながら和也におむつを当てていった。和也はうれしそうに洋子の顔を見ている。そこには安堵の表情が浮かんでいた。洋子は和也が洋子を見つめていることに気がついていた。洋子はおむつを和也に当てながらちらちらと和也をみていたが和也の表情が安堵に変わっていくのを感じていた。
「はい、おむつを当てたわよ。これでいいんでしょ」
「洋子、オッパイ」
「昼間したからいいでしょ。今は買ってきたおしゃぶりを舐めましょう。それともミルク」
「オッパイ」
「わがままね。ミルクは夕飯を食べた後だからやっぱりオシャブリね」
洋子は和也の言うことに無視して今日買ってきたおしゃぶりを持ってきた。


「オッパイ」
「ママの言うことを聞くといったでしょ。今はオシャブリね。はい、口を開けて」
和也がおとなしく口を開けると洋子はオシャブリを和也の口に入れた。和也は幸せそうにオシャブリを口に咥えて遊び始めた。
「和也、夏休みどこへ行こうか」
和也はオシャブリを咥えたまま答えない。
「和也、もう旅行は無理ね。映画でも見ようか。それとも日帰りで海でも見に行こうか」
「洋子の行きたいところへ連れて行ってあげるよ。今年は何かどこへ行きたいという考えが浮かばないな」
「そうね、映画ならホルルとか。海なら湘南は込むから千葉の海とか」
「後6日あるから両方とも行こうか」
「後、実家へ行ってもいい?」
「もちろん、でも家はいいよ。正月に行けばいいや。洋子の実家へ行っておいで」
「一緒に行かないの?」
「映画と海以外は家でゆっくりしている」
「そんなに具合悪いの?」
「少しゆっくりすれば大丈夫だよ」
「そう、私も正月に実家に帰ろうかな。帰ると赤ちゃんはまだかってうるさくて」
「そうだな。そうそうネットショッピングだ」
「そうね、どんなのか見せて」
和也は、洋子が夜勤でいない夜などにいろいろホームページを探索していた。そのネットサーフィンで何件かのショップを見つけ、三件位に目星を付けていた。
「これが千葉にあるB&Wでしょ、横浜にある懐古着、そして東京のベビフ」
「BMW?車の」
「そうじゃなくてベビー・アンド・ウェアの略みたい。それから懐古着は昔を懐かしむ服、最後はベビーフレンドからお店の名前をつけているみたいだ。それぞれおむつや赤ちゃん用衣服に個性があって面白い。おむつからいろいろな種類の洋服や小物まで扱っているのはB&Wかな。派手なものから地味なものまでいろいろ揃っている」
「へー、かわいい。本当に赤ちゃん用そのままね。でもサイズは大人用か。私が作ったらもっと安く作ってあげられるよ」
「でも、時間がかかるじゃない」
「それはそうね。最初は買いましょう。私はやっぱりいろいろ種類が揃っていたB&Wの中の、そう、これが可愛いわ。これにしましょ。サイズは問題ないでしょ」
洋子はフリルがたくさん付いたピンクのおむつカバーを選んだ。和也はピンクには少し抵抗もあったが、洋子の言うままに選びサイズを指定して購入した。
「納期は1週間だって」
「そうね、夏休みが終わるころね」
その後も和也は海外サイトのショップも洋子にいくつかを見せた。洋子は日本だけでなく世界中にもこんなにあることをびっくりし、和也がこういうホームページをネットサーフィンしていることにも驚いていた。

二人がそうして話しているうちに和也はあくびをした。まだ、夜の十時だ。
「もう、眠いの?」
「休みの時は少し早く寝る。今日寝れば元気になるよ」
和也はおむつとネグリジェ姿のまま立ち上がった。
「お休み」
「お休みなさい。もう少しテレビを見たら私も寝るから」
和也は寝室へ行き、一人で先に寝てしまった。洋子は和也のことが心配だが、疲労には睡眠が一番と思ったのでそのまま和也を行かせた。洋子は明日も休みということもあり深夜番組を見て遅くに寝た。和也は少しいびきをかきながらぐっすり寝ている。
「おむつして、私のネグリジェを着て、仕方ないわね。でも疲れているのよね」
洋子はそう、つぶやくと和也の横顔を見ながら寝入っていった。
 

 
inserted by FC2 system