週末赤ちゃん
(ラブ・カバ−)

芥川秀一

加代子が遊びに来て和也を赤ちゃんとして扱い楽しかった日が終わると、もう夏休みも最後の日だった。その日の朝、玄関のチャイムがなった。
「宅急便です」
「はーい、今行きます」
洋子は玄関でサインをすると寝室に戻ってきた。
「和也、待っていたものが届いたわよ。千葉県の鴨川の鈴木さんという宛名。覚えてる」
「あーそろそろ1週間だな。カバーでしょ。開けてみよう」
和也はダンボールを開けると中からインタネットで見たのと同じピンクにフリルがたくさん付いているかわいいおむつカバーが出てきた。
「超かわいいね。私がパンツ代わりにしてもいいかもね」
「洋子もおむつしてみる」
「やだ、冗談よ。ただあまりにかわいいから。そうね、私の妹には良く似合うわよ。きっと」
洋子は和也のおむつの中を覗く。今日の朝、和也はまだオモラシをしていない。
「次におむつを代えるとき、あ、でも布おむつが不足しているから今日の夜ね。洗濯が溜まってしまっているから。今日の夜にこのおむつカバーをしてあげるからね」
「じゃ、布おむつもネットで頼もうか。」
「加代子が持って来てくれたし。勿体ないよ。それにまた1週間くらいかかるわよ。布おむつなら位なら私が作ってあげる。それならすぐよ。この前そういう生地も買っておいたから」
「でも、ロンパースがまだ完成しないのだろう」
「丁寧に縫っているのだから焦らないのよ。それより今日で夏休みも最後ね。原宿も行ったし、久しぶりにデパートにも行ったし、ゆっくりもしたし。また明日から仕事をがんばろうね、和也」
「そうだね」
洋子は明日からの和也の出勤で和也がおむつをどうするのかを聞いてみたかった。まさか会社に行くのにもおむつをするはずがない、と思うが万が一当てていくよ、と答えられたらどうしようと不安で和也に問うことはできなかった。その分、今日は最後の夏休みだからうんと赤ちゃんのように可愛いがってあげようと思う。そして洋子の願いである妹にすることも今日で最後にしようかと思う。今日一日和也をうんと赤ちゃんと妹扱いしてあげよう。
「和也、今日の午前中でロンパースを仕上げるよ。それでうんと赤ちゃんのようにやさしくしてあげるね」
「本当。最後の夏休みだからね」
「そうねだから赤ちゃんだけじぇなくて、妹としてもやさしくしてあげるわ」
「妹としてってどうやさしくしてくれるの」
「そうね。私の古いいろんな洋服を着させてあげる。そして写真をとってあげる。もちろん、おむつをしてロンパースを着た写真もとってあげる」
「写真はなんだか恥ずかしいけど」
「そう言わないの。自分の写真を見ることは自分を見直すことでもあるのよ。思い出にもなるし」
洋子はロンパースの仕上げをしながら和也に話しをしてくる。
「和也、1階に住んでいるお喋りなおばさんいるでしょ」
「あ、俺がはじめて女装して帰ってきたときに会ってしまっておばさんだろ」
「そう、あのおばさんがね。私が加代子の家に行くときだったかな、挨拶されてね。それで家のベランダにおむつが干してあったね、と言われたの」
「えー、それでなんて答えたの。まさか」
「そう、あのおばさんは放送局みたいだから私も警戒してね。あれは友達が遊びに来ていてその赤ちゃんのおむつって話したんだけど、一瞬びっくりしちゃった。こんどからはもうベランダには干せないなって思うわ。だから洗濯も遅れ気味なの」
「あの、おばさんには気をつけような。本当に放送局みたいだから」
「さあ、ロンパースが完成かな。和也。どうかわいいでしょ」
黄色の生地でできたロンパースを掲げると洋子は和也に当ててみる。調度いいようだ。
「和也。もうお昼だからお昼ご飯を食べてからにしようか。ロンパースを着てみるのは」
「いいよ。お昼を食べたら着させて」
洋子はあり合せで昼ご飯の用意をしながら和也の赤ちゃん願望を叶えてあげるにはどうしたらいいかを考えた。一杯赤ちゃんとして扱ってあげればストレスもさめると思う。ざる蕎麦を茹でながらあることを考えた。
「和也、出来たわよ。今日はざる蕎麦よ。食べる前にやっぱりさっきのロンパースを着させてあげる」
「俺はその方がいいけど。気持ちが変わったの?」
「別にそうでもないけど。ロンパースを着た赤ちゃんにお蕎麦を食べさせてあげようかと思って」
「それもいいね。でもお蕎麦は箸でこうして、ずるずるって口に運ぶのがおいしいかな」
「それはそうね。でも食べさせてあげる」
夏に冷えたざる蕎麦はうまい。わさびに刻んだネギを入れ、蕎麦に汁を少しつけて蕎麦をすする。日本人に生まれてよかった思うひとつはこれではないだろうか。洋子はロンパース姿で椅子に座った和也に蕎麦を食べさせてあげたが自分で蕎麦すするほうが多かった。蕎麦を食べ終わり一息つき後片付けが終わったとき、洋子は寝室に行った。帰ってきたときには手に数着の洋服を持っていた。
「和也、これね、セーラ服でしょ、それにテニス服。短いスカートと、中に穿くスコート。男ならいつもいやらしい目で見ていたでしょ。それからバレーのレオタード。バレーはバレーボールじゃなくてクラシックバレーの踊るバレーの方ね。高校三年生の時のものだけどフリフリのスカートになっていてとてもきれいでしょ。和也に着させてあげる」


「いいよ。そんな着せ替え人形みたいじゃないか」
「そうよ、私の妹になるために着せ替え人形のようにいろいろな服を着て写真を取るの。楽しいでしょ」
「男は着せ替え人形にはあまり興味ないけど」
「和也は私の妹になるって約束したんだから。そう、まだおむつがとれない赤ちゃんにいろいろなお洋服を着させてあげるの。楽しいでしょ」
洋子は和也のロンパースを脱がせるとセーラ服を取り上げる。和也はまた紙おむつ1枚に姿になってしまった。洋子はセーラ服を着させてはデジカメで写真をとり、テニス服に着替えさしては写真とはしゃいでいた。さすがにバレーのレオタードはおむつをしたままでは不恰好になってしまったが。洋子は赤ちゃんになった和也と妹になって和也を交互に扱い最後の夏休みもあっと言う間に夕方になっていった。


「和也、最後の夏休みだから外食しようか」
「そうしよう。焼肉に行こう」
「じゃ、またお化粧してあげる。外出するときはお化粧しないと男と思われちゃうわよ」
洋子は前回しなかったアイシャドウを和也にしてあげた。そして今日はさらに短いスカートにストッキング、そして赤いハイヒールを履かされ、駅の近くの焼肉屋に行き最後の夏休みを満喫した。

翌朝、洋子はいつも朝6時には起きる。洗濯を始め、朝ご飯の支度もすると7時になってしまう。7時にはいつも和也を起こす。寝室に行ってみると和也はもう起きていた。おむつは足の側に脱ぎ捨てられ、スーツのズボンを穿きワイシャツを着てネクタイを結んでいるところだった。
「和也」
一瞬絶句した洋子であった。会社にはおむつをしないで行って欲しいという願いが叶った姿がそこにはあった。
「和也。朝ご飯できてるよ。会社行こうね」
洋子はおむつのことは一切言葉に出さずに和也に声を掛けた。会社にはおむつをしないで行ってほしいという気持ちが伝わったような気がした。
それからの1週間はいつもと変わらない生活だった。洗濯した布おむつもカバーもそして紙おむつやロンパースも箪笥の中にしまい、和也の目に付かない状態になっていた。夏休みが開けてからの和也の仕事はそれほど忙しくはなかった。いつもと変わらない生活を二人は楽しんだ。ほとほどの残業をして和也は家に帰っていた。洋子は看護婦なので時々夜勤がある。そんなとき和也はネットサーフィンして目だけでおむつや赤ちゃんを楽しんでいた。そして週末の金曜日がやってきた。
「ただいま」
「あらお帰りなさい。今日は早いわね」
「週末だから定時で帰ってきたよ」
洋子は夜勤あけで夕方から夕食の準備をしていた。和也は着替えに寝室へ行き、洋子は再びキッチンに行き、結婚した当初のように夕食の支度をしていたときだった。
「きゃ」
いつの間に戻ってきた和也は立ちながら支度している洋子に後ろから抱きついた。和也は両手を洋子のバストに当てブラジャの上から撫でる。
「ちょっと、夕飯の支度をしているからだめよ」
今までにも2回くらいこんなことがあった。そういう場合、洋子は以外と怖い。冷たく反応する洋子にいつも和也はおとなしく引き下がっていた。しかし今日の和也はなかなか離そうとしない。
「和也、怒るわよ。もう、止めてよ。夕飯できないよ」
「洋子、オッパイ。それからおむつして」
「えー」
洋子は和也が1週間前と同じ赤ちゃんのようになってしまったことに気を落とす。しかし、前と同じような状況であれば仕方がない。会社へ行くことで直ったと思っていたが、そうではないようだ。
「和也、もうおむつは止めたんでしょ」
「そんなこと言ってないよ。ただ、会社に行くのにおむつしたままじゃ行けないから一時止めたけど」
「そうなの」
洋子はがっかりするが、和也のストレスは直っていないようだ。少し優しくしてあげないといけないと思う。でもまた来週の月曜日からはきちんとしてくれるはずだ。それならば仕方ない。もし、週末の休みの度に赤ちゃんになってしまうのなら、今流行りの週末起業という言葉と同じ感覚で週末赤ちゃんと呼べばいいのだろうか。しかしまだ、赤ちゃんになってから1週間過ぎただけだ。元の和也のように戻るまで頑張らなければと洋子は思う。
「仕方ないわね」
洋子は料理の支度を一度止めた。煮込んでいるものの火を止め、包丁を片付ける。和也は洋子の後ろから追いかけ、バストから手を離さない。
「和也、わかったから一度手を離して」
ようやく和也は洋子のバストから手を離した。洋子は和也の手を握ると寝室の方に連れて行く。和也はネクタイを取り、スーツの上着は脱いでいた。洋子は子供をあやすようにワイシャツのボタンをひとつひとつ外していく、ズボンを脱がす。和也は夏でもランニングを着ている。そのほうが汗を吸ってくれるという理由だ。そしてトランクスも脱がせる。
「和也、紙おむつでいい」
「なぜ?だってようやく全部洗濯して締まったばかりなのよ。もう封印しようかと思っていたのに」
「そんな」
和也の泣き出しそうな顔を見て洋子はやはりまだだめかと思う。あまりからかってストレスがひどくなっても良くないと思う。
「封印は冗談よ。でも昼間というか寝る前までは紙にして。これは洋子のお願い」
「わかったよ」
洋子は和也に紙おむつを当てると先週完成したロンパースを和也に着せた。横になって着させてもらった和也はすばやく洋子の膝に頭を載せた。
「洋子、オッパイ」
和也は洋子を膝から見上げ、洋子のオッパイを触る。洋子はやれやれという態度をしながらもティーシャツを上げる。そしてブラジャを上に持ち上げて乳首を出す。そこには白いような肌の色のオッパイがあり、まだ子供を産んだことの無い乳首があった。和也はその乳首に吸い付く。手でオッパイを揉みながら、もう一つの手で洋子のスカートの中に手を入れ秘部を探る。どのくらいそうしていただろうか。洋子の頭には感じている部分もあるが夕飯のことが気にかかる。
「もう、いいでしょ」
洋子は和也の口におしゃぶりを入れるとおっぱいを隠す。和也は仕方なくおしゃぶりを舐め始める。洋子が立ち上がろうとすると和也は洋子の手を握って離さない。
「おしっこ、出ちゃった」
「もう、オトイレでしてよ。紙おむつが勿体ないよ」
「おしっこ」
和也はそれについては答えない。ただおしっこが出てしまったことを繰り返す。洋子は布おむつだったらすぐに替えなければいけないが、吸収性のいい紙おむつだから1回分くらい大丈夫だろうと思う。節約のためにもそうしよう。
「どれどれ、ああ出ているけどそんなに出ていないよ、和也。取り替えなくても大丈夫だよ」
「そう?本当?」
和也はすぐにおむつを取り替えてくれると思っていたのに少し落胆した。しかし紙おむつは吸収性がいいとは言え、濡れた感じが下半身を包む。暖かい感じが和也の下半身を包んだまま、夕飯になった。洋子は久しぶりにビールを出してくれた。赤ちゃんを卒業したと思い週末に簡単にお祝いでもしようかと思っていたが、そうではなくなってしまった。しかし、ビールはビール。飲もうと思ったのだからと、根赤の洋子は和也と一緒に乾杯をした。
「乾杯」
「かんぱい」
洋子の手料理を肴にビールを飲む。今年の夏休みはどこにも行けなかったから年末年始は帰省と一緒に温泉でも入ろうかとか、夏休みの分で海外でも行こうかとか遊ぶ計画で話しが盛り上がっていた。そんな話に釣られてビールをそこそこ飲んでいた。たまに飲むビールは回りが速い。そしておしっこが近くなる。和也は尿意を感じていた。そして話の合間に2回目のお漏らしをしてしまった。2回ということで漏れてしまうのではないかと心配をしつつも紙おむつはそれをしっかり吸収してようだ。和也はその暖かい感触を楽しんでいた。その何気ない恍惚とした態度が自然と出てしまったのだろうか。
「和也、何をにやにやしているの」
洋子が不思議がって問いただすが、和也は何もなかったようにまた話を続ける。ビールによる尿意は和也だけではなく、洋子にも来ていた。それほど強い尿意でもなかったが、少し我慢をしていた洋子だった。話の合間を見つけてトイレに行こうとした矢先だった。洋子はトイレに行こうと立ち上がろうとした。
「あ」
「洋子、どうしたの」
「何でもない」
洋子はお腹を押さえながら、そして股を閉じながらトイレに向かった。和也は洋子が座っていた椅子、スカートのお尻部分が少し濡れていたのを見逃さなかった。和也はまさか、とは思いつつ、心配をしてトイレの前に行く。
「洋子、大丈夫か」
「大丈夫、なんでもないよ」
明るい声が返ってきた。そしてトイレで流す音が聞こえたので和也はダイニングに戻りながら影に隠れて洋子を盗み見た。洋子は手に布着れを持ち、それを洗濯籠の中に入れると
寝室に行き、新しいショーツを穿き、スカートを着替えていた。これは間違いない、洋子はおしっこを漏らしたというかチビッテしまったのだろうと思う。何食わぬ顔で洋子はダイニングに戻りテーブルに座る。
「洋子、おしっこ漏らしちゃったでしょ」
「そんなこと無いよ」
「だって、スカートを替えたんだろ。それにその椅子も少し濡れていたから、ほら立ってごらん、お尻のところがまたおしっこで濡れてるはずだよ」
「えー」
動かぬ証拠を見られて洋子は恥ずかしさのあまり愕然とするが、ニコニコと笑ってごまかしている。
「それに心配だったから様子を見に行ったんだよ」
「大丈夫だってば」
「だから、少しちびったんだろ」
「そうよ。女性にはよくあるのよ。こういうことが」
「そうか?洋子もおしっこ漏らすんじゃ、おむつをしなけりゃいけないね」
「漏らしたんじゃないの。うるさいわね。ちびったの」
「同じことじゃない」
洋子は立ち上がるとキッチンに立ち、後片付けを始めた。和也は仕方なくテレビを見ていた。洋子がチビッタ話はそのまま終わってしまったが、和也は洋子にもおむつを当ててあげるにはどうしたらいいかを考え始めていた。

「洋子、和也さんどう?」
「どうって」
「まだおむつして赤ちゃんなの?」
病院の職員用の食堂でお昼ご飯を食べた後、加代子と洋子は庭のベンチに座って話し始めた。暑い夏も終わり9月の下旬ともなると暑くもなく寒くもなくほどよい気候だ。
「そうなの。会社へ行くときは全然普通なんだけど、今は週末になるとまた赤ちゃんなのよ」
「そう、ストレスは完治しなかったのね。大変ね」
「金曜日の夜から赤ちゃんのお世話よ。今、流行の週末起業ではなくて週末赤ちゃんね」
「じゃ、おむつやおむつカバーの洗濯も大変でしょ」
「そうなのよ。加代子が持ってきてくれた布おむつは重宝しているけどカバーの枚数が足りなくて。かと言って買うのももったいないし。今は最初に買ったキシキとネットで買った2枚なのよ。足りないから私が見よう見まねでもう1枚作っていてもうすこしで完成するところかな」
「じゃ、寝る前は布にして、昼間は紙おむつね」
「和也は昼間も布おむつって言うけど、カバーを取り替えてあげたくても替えがないから紙にしてもらっているわ」
「そう、この前遊びに行ったときおむつカバーの廃棄処分が出たら持って行く話だけど来月の7日に持っていくわ。9月の末で確か期限切れがあるはずなのよ。持っていくからまた遊びに行ってもいい?」
「ええ、いいわよ。おむつカバーの枚数が増えれば和也も喜ぶと思うわ」
 

 
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