ラブ・カバ−誕生

(ラブ・カバ−)

芥川秀一

洋子も週末赤ちゃんになり、二人でおむつを当て合っていた秋も終わりに近づき、11月に入るとあちらこちらに冬の兆しが出てくる。師走まで後3週間という週末、和也は洋子に新しいことを頼む。
「洋子、おむつはどう?」
「どうって」
「もう慣れたとか、オモラシの時の感触いいとか?」
「私は、チビリが少し多かったから和也と加代子に言われて当てただけでしょ」
「そうだな。でも、オモラシをする時やおむつを替えて上げるとき、洋子は何か気持ちよさそうだから」
「バカ」
和也は洋子がオモラシをするときや、おむつを替えてあげるときの表情を見逃さなかった。うっとりとしていて、恥ずかしさがあってハニカムような洋子の表情は可愛かった。和也はその洋子のおしっこを共有したい。逆に和也のおしっこも洋子に共有させたいと考えていた。しかし、それをどうやって実現するのか、その方法をこの秋にずっと考えていた。師走に入りその案を、案から実行に移す段階にした。女性の「バカ」という言葉は肯定であり、恥ずかしさから相手をそう呼んで照れ隠しをする代表的な言葉だ。しかし進め方によっては「バカ」が本当にバカになり、怒らせてしまう。うまくやれば「バカ」は素直さに変わる。洋子の性格をわかっているが、ムードも大事な要因だ。それに愛する人のものを共有するということが愛情表現なのだ。和也はわかってくれると信じていた。
「洋子、新しいおむつカバーを作ってくれる」
「いいわよ。私専用のカバーが完成したところだから。今度はどんな色、どんな柄?」
「そうだな、お姫様の下着のような豪勢なやつがいい」
「お姫様ねえ?」
「そう、シルクの布にレースを一杯付けて」
「フリルじゃなくて、レースのカーテンような豪勢なやつね」
「そう、それと今回は少し大きくなると思う」
「大きいの?20枚も30枚も布おむつを当てるという意味?」
「結果的にはそうなるのかな?そう、カバーも大きいけど、布おむつも大きくする必要がある」
「おむつカバーだけじゃくなくて、おむつも大きいの?」
和也は大きなおむつとおむつカバーのイメージを説明するが、洋子はちっとも理解できない。単に大きいというだけでは作る側からするとそんな大きいおむつをどうするのかが想像できない。洋子と和也の会話はチグハグになっている。洋子は興味があるような雰囲気だから和也はそろそろ具体的に説明する必要があると判断した。
「そう、カバーもおむつも両方とも大きい」
「そんな大きいおむつを和也が当てるの?」
「そう、それともう一人」
「もう一人?」
「これは2人用のおむつなんだ」
「2人用?信じられないわ。もう一人は誰なの。お友達?」
「違うよ。それは洋子だよ」
「私?私と和也用の2人用のおむつ?ますます混乱してきたわ」
「洋子、真剣に言うけどね。洋子もおむつの中にオモラシをすると気持ちいいだろう。だから、そのなんと言うか変な気持ちはないよ。ただ、洋子のオモラシを共有したいな、という事。逆に俺のオモラシを洋子にも感じてもらいたいと思う。それがこの大きなおむつの目的なんだ」
「なんか汚いような」
「そんなことないよ。おしっこを飲むとか、体にかけるとかそういうSMみたいなことじゃないよ。そういうことは考えていないよ。でも洋子のものを共有したいし、俺のものを共有してもらいたい」
「でも、それとその大きなおむつとのイメージがわかないわ」
和也は、愛し合う二人が正面から抱き合ったままで、二人の下半身を同時に包み込むおむつのイメージを説明した。おむつは1人のお尻から股をくぐり相手の股からお尻を包む。これが縦方向のおむつとすると横方向のおむつは2人の腰を回りこむように包む。さらに2人のおへその下辺りに数枚のおむつを入れる。二人は抱き合っていて密着しているが、その隙間におむつを入れる。そしてそのおむつを包むためのおむつカバーが必要になる。おむつはそのままだと立って抱き合っている二人から落ちてしまうので横方向のおむつは安全ピンで一周したところで止め、縦方向のおむつはその横方向のおむつに安全ピンで止める。おへその下に入れるおむつも横方向のおむつに固定する。おむつカバーは二人のお尻と2人の足が入る1つのカバーになる。パンツ式も考えられるし、ホックやマジックテープで留めるなら二人の両横が留めやすい。
「和也、それは私と和也が抱き合って1つのおむつを当てられて、その中にオモラシということ?」
「そういうこと」
「和也のおしっこが私の体にかけられる訳?」
「でも、おむつの中だから大丈夫だよ」
「でも、それって何か変。自分のならまだしも」
「いいと思わない?」
「だから自分のなら慣れてきたけど、すごく抵抗があるわ」
「だから、愛する人のものを共有する。おむつの中で共有するというのはいい感じと思うんだ。1人で感じる倍を愛する人と共有できるわけだろ」
「言っていることはわかったけど、いやよ」
和也は「今日はここまで」と判断した。これから11月の1カ月間少しずつじわじわと説明しながら説得していくことが必要と思う。あくまで愛する人のものを共有するということで1つの愛情表現を強調すべきだ。和也はそれから週末毎、ウィークディにも少しずつ洋子に説得した。洋子は「初めは門前払い」だったが、序所に興味も持ち始めてきているように思われる。そして1カ月が過ぎた。和也も洋子もおむつを当ててオモラシをすることに慣れてきて少し新しい刺激が欲しくなっているのも事実だった。インタネット上のホームページにはいろんなおむつのページもある。どちらかと言えば女性の写真が多いホームページが多いが、中には男性のおむつ姿、赤ちゃん姿の写真のサイトも多い。楽しむおむつ、罰として強制的に当てられるおむつ、赤ちゃんとして甘えるおむつなど千差万別だ。そんなネットサーフィンも二人で楽しむようになっていた。もちろん新しい写真やストーリー、ビデオ、DVDの紹介など次々と出てくるが全くの新しさという点では大きな刺激は無くなっていた。洋子は和也の言うことにも少しずつ理解を示しつつ新しいおむつを考え悩んでいた。
師走に入るとあちらこちらにクリスマスの雰囲気が出てくる。イルミネーションや、クリスマスプレゼント、そして有名なクリスマスケーキの予約などが始まると今年も後わずかと感じてくる。クリスマスまで後3週間という週末、和也はまた説得を始めた。
「洋子、大きなおむつの話だけどね」
「ええ、何か別の名前は無いかしらね」
「え?」
「大きなおむつというより、愛情を表現するためのおむつでしょ。だから何か言い名前があったらいいかななんて」
和也は今まで門前払いだった洋子の変化を感じた。「大きなおむつの名前を考えましょう」ということは理解を示してくれたと感じられる。
「洋子、もしかして大きなおむつを作ってくれる。そして俺の愛情をその中で受け取ってくれる」
「私のも受け取ってくれるんでしょ」
「もちろん。ありがとう」
「でも、恥ずかしいけど」
「そんなことないよ。大丈夫だよ。それよりいい名前を考えよう。愛情おむつとかどう?」
「そうね?」
「ラブおむつとか。ハートおむつ、ピンクおむつとかいろいろ考えられるけど」
「そう、おむつ、おむつって言わないで。愛情表現なんだからもう少しロマンティックにしたいな」
「そう言われても。あんまりセンスないから」
「そんなに難しく考えないで、ラブカバーにしようか」
「ラブカバー。おむつという言葉は出てこないけど、カバーという言葉からは連想はできるような感じ。いいかも」
和也の考えた大きなおむつの名前はラブカバーに落ち着いた。そして和也はラブカバーを当てるのはクリスマスにしたいと考えた。愛する二人への大きなプレゼントになると思う。和也は洋子にクリスマスまでに完成してほしいと依頼し、洋子もそれに協力すると答えてくれた。
師走は特に時間の流れが速い。洋子は週末赤ちゃんになり、週末赤ちゃんの和也をあやしながらもラブカバーの作成に励んでいた。ときどき寸法を測っては実際に和也に当ててみたり、二人のラブカバーの実現に向けて忙しくしていた。
「洋子、クリスマスにラブカバーをしような」
「ええ、間に合うと思うわ」
「正月は田舎に帰ろうか」
「そうね夏休みは帰っていないから」
「また、赤ちゃんは出来たかったって親父やお袋が聞くんだろうな。うるさいけどね」
「家もそうよ。でも、和也の赤ちゃん姿を両親に見せてあげようか」
「それはいやだよ」
「あ、和也の弱みを見つけた」
「それじゃ、洋子のおむつ姿も見せてあげれば?」
「わかってるわよ。冗談よ」
ラブカバー実現の日のクリスマス、そして正月の予定と和也と洋子は仕事もプライベートも充実した師走を過ごしていた。
 

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