6.散歩

美樹と由樹のマンションから車で20分ほど行くと木々がたくさんある公園に着いた。まだ、昼間なので赤ちゃんや幼児を連れた親子が少し居る程度だ。ベビーカーで少し歩きまわった後はベンチで休む。
「恵子さんもベビーカーから降りて休憩しましょうね」
美樹はカメラでシャッターを切り、何枚か写真を撮ると3人で並んでベンチに座る。由樹はバッグから哺乳瓶を取り出す。
「さ、ミルクの時間よ」
「また、飲むのですか」
「そうよ、私の膝に頭を乗せて横になりなさい」
由樹は横になった恵子の唇に哺乳瓶の乳首を入れる。美樹はまた立つとシャッターを切る。
「あら、大きな赤ちゃんですね」
本当の赤ん坊を抱きながら散歩してきた若いママさんが恵子の顔を覗き込む。恵子は乳首を咥えながら顔を横にして隠れるようにするが、由樹は恵子の頭を元に戻してしまう。
「ミルクの時間ですの」
「そう、大変ですね。それにしても本当に大きな赤ちゃんですね」
「体は大きいですけどまだまだ赤ちゃんそんままですのよ」
「本当ですか。じゃ、ミルクもお漏らしも3時間毎でお母様も大変でしょう」
「ええ、今は紙おむつを当てさせていますけど、家では布おむつにしていますの。その方がおむつ離れが早いでしょう。でももうこんなに大きなってもおむつが外せないのですの。でもそれも可愛い娘のためですからちっとも大変じゃなくてよ」
「そうなんですか。家では布おむつを当てているのですね。そうそう赤ちゃんのお名前は」
美樹と由樹は一瞬顔を見合わせたが、機転の効く美樹はすぐに返事をした。
「めぐみです」
美樹は恵子の恵の字を一字で読んだ名前のめぐみをとっさに言った。恵子は自分の本名が言われるのかとどきどきしながら若いママとのやり取りを聞いていた。
「そう、めぐみちゃん、かわいいわね、早く大きなってくださいね。あら、ごめんなさい、体はもう十分大きいわよね。ミルクとおむつを早く卒業できるといいわね。それでは失礼します」
若いママはそういうとぐずり始めた自分の赤ちゃんをあやしながら去って行った。恵子はそのやり取りを緊張しながら聞いていたし、何かをしていないと場が持たないので哺乳瓶のミルクを飲むことに集中していたが、その緊張と冷たくなっていたミルクが恵子に尿意を発生させていた。紙おむつとはいえ、公園でお漏らしはしたくないと思っているとその尿意はますます強くなっていた。
そこへまた幼児を連れた親子連れが近寄ってきた。3歳位の女の子とそのママさんと思われる2人でれだ。
「ママ、大きな赤ちゃんね」
「そう、そうね」
若いママは大きな赤ちゃんが膝枕でベンチに横になっている姿に違和感を湧くが幼女は大きな赤ちゃんの恵子に興味が湧いたらしい。
「赤ちゃんはミルクを飲んでいたの?」
「ええ、そうよ。あら、もう空だわ。もう1本持ってきたからちょっと待っててね」
由樹はバッグからもう一本の哺乳瓶を取り出すと恵子の口に入れる。恵子はもう飲めないと思いつつも幼女から見られていることを避けたいために乳首を吸い始める。
「一杯飲んでいるね。お腹が空いているんだね」
「そうね、大きな赤ちゃんだからミルクも一杯飲むのよ」
「ふーん、でも私はもうミルクは卒業したのに大きなお姉ちゃんはまだ卒業できないのかな」
「体は大きいけどまだ赤ちゃんなのよ」
幼女は大きな体だが赤ちゃんの格好をしている恵子をしげしげと見つめる。恵子は目を合わすのを避けるため必死にミルクを飲んでいる。
「私はもうおむつはしていないけどこの赤ちゃんはまだしているの?」
幼女は不思議な光景を目の前にしてどんどん質問をしてくる。
「赤ちゃんだからもちろんおむつを当てているわよ」
「へえ、じゃお漏らししちゃうんだ」
「だって赤ちゃんだからね」
「ふーん、大きな赤ちゃんの名前はなんて言うの?」
「めぐみちゃんよ」
「めぐみちゃん、もう大きくなっているけど早くおむつとミルクにさよならしないとね」
恵子は2本目の哺乳瓶のミルクも飲みほしてしまった。由樹がそれに気付くとバッグからおしゃぶりを取り出した。
「めぐみちゃん、ミルクの後はおしゃぶりよね。そうだ。赤ちゃんにおしゃぶりをあげてくれる」
「え、いいの。うん、おしゃぶりをあげるね、赤ちゃん、あーんしてね」
恵子は幼女からおしゃぶりをもらうのは抵抗があるが、由樹は恵子の顔を幼女の方に向けてしまう。
「はい、おしゃぶりよ。いい子ね」
幼女は恵子の口におしゃぶりを入れて恵子の頭を撫でる。
「いい子、いい子ね」
幼女の目は恵子が咥えたそのおしゃぶりに釘付けになる。自分より大きな体の赤ちゃんがミルクの次にはおしゃぶりを舐めている光景に幼女は思わず恵子の頬を撫で始めた。恵子は幼女の顔を避けて下を向いたが、由樹がまた幼女の方に顔を向ける。
「赤ちゃんだからおしゃぶりもするんだね。大きな体してるけど本当に赤ちゃんなんだね」
「すいません、立ち入ったことを言いまして。かおるちゃん、もう行きましょうか」
若いママは幼女のかおるがあまり立ち入ったことをして失礼かと思い、かおるの手を引いて去ろうとする。
「大きな赤ちゃん、バイバイ」
美樹と由樹は手を振って幼女にサヨナラをした。恵子は2本目の哺乳瓶も空にしてお腹の調子に異変を覚えた。また、強い尿意が襲ってきたのだ。水分の取り過ぎと見知らぬ人に赤ちゃん姿を見らている緊張感は恵子に尿意を催させた。恵子はまた見知らぬ人が近づいてくるのではないかと周りを見ながらさらに緊張をしていると体がブルッと震えた。
「恵子さん、寒いの」
「いえ、大丈夫です」
寒くはないが一度覚えた尿意はますます強くなるばかりだ。美樹と由樹は夕飯は何にしようかなど気楽な話しをしている。恵子は早くマンションに帰りたかったが、それを言えずに尿意を我慢していた。
また一人中年の女性が一人で近づいてくるのが見えた。恵子はもう自分の姿を他人に見られるのも自分が会話の話題になるのも嫌がり、由樹にそっと言う。
「お家に帰ろう」
「そうね、もうそろそろ帰りましょうか」
恵子はベビーカーに乗り、由樹が押して動き始めたときにその中年女性は声をかけてきた。間に合わなかったと恵子は悔やんだ時、中年女性は興味しんしんに話しかけてきた。
「あら、大きな赤ちゃんですわね、おいくつですか」
「16歳です」
美樹はあらかじめ答えを用意しているように迷いもなく答えた。恵子にはまた他人に見られ始めたという緊張が走る。もう尿意も限界だ。
「16歳の赤ちゃんは珍しいわね。でも赤ちゃんのお洋服を着ているだけなんでしょ」
「いいえ、今哺乳瓶でミルクを飲んだばかりですし、あら、おしゃぶりが外れているわ」
由樹は恵子の首元に落ちていたおしゃぶりを取り上げると恵子の口に入れる。
「哺乳瓶やおしゃぶりも赤ちゃんそのままですよ」
「まあ、じゃ、おむつも当てているのかしら」
「赤ちゃんですからお漏らししちゃうのでおむつは手放せないですね」
「じゃ、お世話も大変ね」
「そんなことありませんよ。体は大きいですけど本当の赤ちゃんですから」
恵子は自分がそういう会話の話題になっていることに必死に耐えていたが、その緊張はますます尿意を大きくするだけだった。そしてなかなか終わらない会話の最中に恵子はとうとうお漏らしを始めてしまった。チョロ、と出始めたおしっこはすこしずつ紙おむつの中に放出されていく。恵子はもう会話の内容は耳に入らなかった。紙おむつの中に放出されたおしっこのことを考えているとそれは少し消えていた。紙おむつはおしっこを吸収していたのだった。恵子はすこし元気を取り戻すと由樹の手を掴む。主に美樹と中年女性が会話をして由樹は恵子の様子をうかがっていたので、由樹は恵子がお漏らしをしたことに気づいていた。恵子からのサインはもう帰ろうということを想像すると、中年女性とさよならをした。
「この子がぐずり始めたのでそろそろ失礼します」
「ええ、それじゃ失礼します」
中年女性とは逆の方向にベビーカーを動かしながら別れていった。少し離れたところで由樹は恵子を覗きこんだ。
「恵子さん、お漏らしした?」
「は、はい」
美樹と由樹は機嫌よくベビーカーを押して駐車場へ向かう。恵子はお漏らしはしたが、布おむつに比べると気持悪くないのでホットしていたが、水分が冷えてくると体も冷えてしまうことが心配だった。
 

おとなの赤ちゃん返り
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