7.狭い狭い部屋の中で

マンションに着くなり、恵子はもじもじしながら由樹に小さな声で言う。
「あの、おむつ替えてください」
「そうねお漏らししてたのよね。紙おむつはどう?」
紙おむつはおしっこを吸収してくれるのはいいが、だんだん冷えてくるのと吸収したものがだんだんと重くなっておむつがずり落ちてしまいそうで気持が悪かった。
「吸収してくれるのはいいですけど」
「そうね、どちらにしても湿度は高くなるし大変よね。今度はまた布おむつにしましょう。これから夕飯のお買いものにいくけど、そんなに時間はかからないから大丈夫よ。でも万が一のことを考えてちゃんと替えも準備していくから安心してね」
安心してということはつまり外でおむつ交換ということになる。そんな恥ずかしいことに安心はできないと恵子は思うし、もうお漏らしはごめんだと思っている。午前中と同じように布おむつをあててもらうと紙おむつとは違う優しさに心が休まったことに自分でも驚く。
準備ができると車に乗ってスーパーへと向かう。もうお漏らしはしないと思う恵子だが、3時間おきのミルクは容赦なく恵子に尿意を催させる。揺れる車の中でもう恵子は次の尿意を感じていた。夕飯の買い物はすぐに終わるという言葉を信じながら外でのお漏らしは避けなければと誓っていた。
夕方の食品売り場は多くの主婦で賑わっていた。恵子はじろじろと見られることに耐えながら尿意が収まってくれることを期待していた。食品売り場に着くと果物、野菜売り場を通り過ぎ魚や肉売り場を歩いていく。美樹と由樹は少し移動しては食品を手に取ってそれでいて何も買い物かごに入れていない。そのときだった。肉売り場が異常に寒いことに気付いた。まるでそのフロアの肉売り場一体が冷蔵庫のような冷気だ。恵子は強まってきた尿意を恨めしく思う。ここでお漏らしをしたら今は布おむつだからもう耐えられない。だから必死に尿意を我慢していたが、耐え難く由樹の手に合図をする。
「恵子さん、どうしたの」
「マンションに帰ろうよ」
「そうね、なんだか今日は夕飯のメニューが決まらなくごめんなさいね。もう少しだからね」
そういうと由樹は少しずつ買い物かごに食品を入れ始めたが由樹は恵子の尿意が高まっていることを確信する。それでもふらふらとあちらこちらを歩いていると恵子の尿意はもう限界に達していた。お漏らししてはだめ、と自分に言い聞かせながらももう少しずつお漏らしを始めていた。そして思わず顔を伏せて嗚咽を穿くとベビーカーに座ったままで恵子は布おむつの中におしっこを出していた。その様子を由樹が見定めるとようやく会計のレジへと向かったがそこは多くの人が並んでいる。恵子は早くレジを済ましてマンションに帰らないと布おむつが気持ち悪くその上おしっこが冷えてきている。
ようやくレジの順番が来て会計を済ませたころにはもう恵子は耐えられないと由樹の手を握って由樹の顔を見る。
「どうしたの、恵子さん」
由樹はとうとう恵子がお漏らしした後の濡れたおむつに耐えられなくなったと確信した。それでも恵子は早くマンションに帰ろうとしか言わなかった。
「恵子さん、もしかしてお漏らしなの?」
恵子は思わずうなづいてしまった。だが、ここでお漏らししたと由樹に教えてもこのスーパーでおむつを替える場所などない。トイレでは人に見られてしまいそうでトイレでもできない。恵子は分かってはいても早くマンションに帰っておむつを替えてほしい気持ちから素直に頷いてしまっていた。美樹と由樹は顔を見合わせると駐車場へ行くエレベータの途中階で降りてしまう。
「駐車場は屋上でしょ」
恵子は思わず大きなを出してしまった。途中階で降りてベビーカーを移動する美樹に問うと由樹が代わって答えた。
「恵子さん、お漏らしでしょ。早くおむつを替えないと大変よ。このフロアにはおむつ替え室があるから安心して」
「い、いや」
恵子はこのスーパーでおむつを替えられるなど誰かに見られたら恥ずかしいのでベビーカーの中で必死にもがくが、由樹はおむつ替え室と大きく書かれているドアをノックし、誰もいないことを確認するとドアを開けた。
「美樹さん、じゃ、恵子さんのおむつを替えているわね。この中は狭いから私が替えて上げるから」
「そうね、よろしくね」
ベビーカー毎、おむつ替え室の中に入るとそこには大きなおむつ替え台があり、ベビーカーも入るともうきつきつの状態だった。由樹は恵子をベビーカーから降ろすと、おむつ替え用の台の上に恵子を乗せようとした。
「あの、ここじゃ嫌です」
「なに言ってるの。ここは専用のおむつ替え室よ。誰にも見られないから早くしましょう。おむつ被れになっちゃうわよ。それにこういう会話をドアの外の誰かに聞かれてもいいの?早くそこに上がりなさい」
恵子はもう汚れたおむつに耐えられないので由樹のその厳しい言葉にしぶしぶ従った。恵子は台の上に上がり、横になるともう後は由樹に任せるしかなかった。
「恵子さん、どうしてほしかったかしら」
おむつにお漏らしをした恵子をおむつ替え室に連れ込んで今さら何よという気持ちだったが、ここは早くおむつを替えてほしい。恵子は素直にその言葉を小さく言った。
「お、おむつを替えてください」
「どうして、さっき替えたばかりでしょ」
恵子は涙を流しながらもう助けてという気持ちでもう一度素直に言わざるを得なかった。
「お漏らししたので、汚れたおむつを替えてください」
「そう、よく言えましたね。じゃ、替えるわね。ここじゃおしぼりはないけど我慢してね」
由樹はようやく恵子のオクルミの足のホックを外していき、おむつカバーも外していく。おしっこの臭いが狭いおむつ替え室に篭もっていく。
「ちょっとお尻を上げていてね」
汚れた布おむつを外してビニール袋に入れると、恵子の下腹部に付いたおしっこをきれいに拭いていき、シッカロールも付けると替えの布おむつを恵子のお尻に入れ込んでいく。
「もういいわよ。替えの布おむつは持ってきたけどおむつカバーは持ってきてないのでこれで我慢してね」
恵子は替えの布おむつは気持ちいいのだが、すこし汚れたおむつカバーがそのままだとすこしがっかりした。それでも汚れたおむつから開放されて安心したのだった。おむつもセットされ、オクルミも着させられるとようやくテーブルから降りてまたベビーカーに乗る。由樹はドアを開けるとベビーカーを押しながら出てきた。
「お待たせ」
「狭い中だから手伝えなくてごめんなさいね」
「大丈夫よ。恵子さんも素直におむつを替えさせてくれたから、じゃ、マンションに帰りましょう」
 

おとなの赤ちゃん返り
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