9.遠退くお宮参り

翌朝、恵子は強烈な尿意で目がさめてきた。まだ眠気の中にいるが尿意は眠気を妨げる。恵子は壁にあるかわいい熊の時計を見ると9時だ。昨日は夜の9時頃に寝たのだから12時間も寝たことになる。そんなことを打ち消すように朝の尿意が恵子の我慢の限界を感じさせる。恵子は昨日の夜に美樹と由樹から言われたことを思い出す。何かあったらインタフォンのボタンを押すこと、部屋には外から鍵がかかっていて出れないこと。分ってはいてもドアのノブを回してドアを開けようとするが、確かにドアは開かない。無造作にドアを開けようと思ったのはトイレに行こうと思ったからだ。でも赤ちゃんのアルバイト中なのでそれは諦める。恵子はインタフォンのボタンを押してふたりを呼ぼうと思うが、それも思いとどまる。ふたりを呼んだとしてもふたりの前でお漏らしをすることになる。恵子は耐えられない尿意に思わず床にしゃがんだ。床にまるで和式トイレがあるようにウンチングスタイルになると恵子はもうおしっこをチロチロと出し始めていた。それはすぐに勢いをまして紙おむつを汚していた。暖かい液体が放出されて吸収されていくのと同時にかすかにアンモニアの臭いを感じて放尿が終わると恵子はため息をついた。
「また、おむつ替えをされるけど、あと今日1日だから」
一人でつぶやくと恵子は立ち上がりインタフォンのスイッチを押した。壁の向こうで小さくポンポンと音がしているのが聞こえた。
その時、美樹と由樹は恵子のその一部始終をカメラで見ていた。恵子が一人でお漏らしをしたと確認したふたりは紙おむつと布おむつの両方を持って恵子の部屋に入る。
「恵子さん、おはよう」
「おはようございます」
「よく眠れたかしら」
「ええ、おかげさまでぐっすりと。でも、あの、すいません、お漏らしが」
「お漏らしできたの?」
恵子はその先を言わないとおむつを替えてくれないと気付くと思いきって言う。
「お、おむつを替えてください」
「はい、いい子ね、ちゃんと準備をしてきましたよ。さ、もう一度ベッドに横になっておむつを替えましょうね」
恵子はベッドに横になると冷たくなってきているおしっこが恨めしい。由樹は恵子のパジャマを脱がしていくと、紙おむつも外していく。由樹はそおっと外していきながらおむつの汚れ具合を見ている。
「恵子さん、大きい方は?」
「いえ、出ません」
「それは健康に良くないわ。便秘なの」
「そういうわけじゃないですけど出ませんから」
恵子はおしっこのお漏らしとそのおむつ替えだけで十分だと思うし、その先は絶対に嫌だと思ってる。
「それじゃ、浣腸してきれいなお腹にしましょう」
「か、浣腸?、嫌です。そんな話は聞いていません」
恵子は必死な顔をしてふたりに訴えるが美樹は微笑んだままで手の中にある箱を開けようとしている。恵子はその箱に浣腸と書かれているのを見るとさらに必死に大きな声で言う。
「そんなことはアルバイトの開始の時に聞いてませんから」
その言葉に美樹は手を留めると由樹と目配せする。ふたりは別の方法を準備しているようだ。
「美樹さん、恵子さんに早くおむつを当てないと風を引いてしまいそうよ。浣腸は今度にしましょう」
由樹は持参したおむつのうち、紙おむつを恵子に当てるとオクルミを着せていく。涎かけも赤ちゃん帽子も付けて昨日と同じ赤ちゃんの格好になる。恵子は由樹の手元にある当てられなかった布おむつを不思議な目で見ていた。なぜ布おむつじゃないのかしらと。
「じゃ、顔を洗って朝ごはんを食べましょう。その前にいい光景を見せてあげるわ」
恵子はリビングから続くベランダを見せられた。ベランダはマンションの最上階だけに許される広めのスペースが用意されている。そこには昨日恵子が使った布おむつがたくさん干されていた。さんさんと輝く太陽の下で布おむつと大きなおむつカバーが干されている。
「恵子さんが昨日汚したおむつよ。太陽さんに消毒してもらいましょうね」
「恥ずかしい」
「大丈夫よ。マンションの最上階だから誰からも見られないわよ。朝ごはんはトーストとハムエッグよ。今日は自分で食べていいわよ。朝はいろいろ忙しいから」
恵子は何が忙しいのか不思議に思いながらも自分で食事を口に運べる嬉しさを感じていた。朝ごはんを食べ終わると由樹がミルクを入れた哺乳瓶を持ってきた。
「恵子さん、ミルクは歩行器の中で飲みましょう」
恵子は狭い歩行器に入れられるとミルクを飲み始めたが、昨日のように由樹は恵子と歩行器をベルトで固定してしまう。
「ベルトは止めてください」
「朝はいろいそ忙しいから赤ちゃんがオイタをしないようにするだけですよ」
恵子は今日はお宮参りに行くと聞いてるからぞの準備で忙しいのかと諦めた。由樹は恵子がミルクを飲み干すのを待ってから髪の毛の手入れとお化粧を始めた。昨日と同じように念入りでお化粧をしていると恵子のお腹は急にグッグーと音をたてた。
「あら、お腹の調子が悪いのかな?なにも変なものは食べていないのにね」
恵子は急にお腹の調子が悪くなり便意を覚え始めていることが心配になったが、由樹はそのまま恵子にお化粧を続ける。恵子はミルクに下剤が混ざっていたことなど知らない。ミルクを飲んでから30分位で始まった恵子の下痢状態のお腹は1時間も立つともう我慢できないほどになっていた。それでも無意識に歩行器から出ようともがくが恵子は歩行器にベルトで固定されている。
「恵子さん、お漏らししていいのよ。お腹もきれいになりましょうね」
「嫌です。でももう我慢できない」
恵子のお腹は由樹に聞こえる位のグッグッという大きな音をたてた。恵子は再度歩行器から脱出しようとしたがベルトは容赦なく恵子と歩行器を繋いでいる。恵子は両足を歩行器の中で立てて、中腰の姿勢になって頭を下げて目をつぶった。もう限界だわ。だめ、でも仕方ない。恵子は中腰のまま少し踏ん張ると大きなおならの音と同時に恵子の紙おむつが汚れた。恵子はそのまま大きな涙を流した。前に病院で入院したときは体が言うことを効かないので我慢した。その時健康になったら二度とお漏らしはしないと誓ったのに今は十分健康なのにおむつを汚してしまったことが悲しかったし、情けなかった。恵子の排泄の終了を確認すると由樹はやさしく声をかけた。
「もう、終わったかな。じゃ、お尻をきれいにしましょうね」
恵子は汚物がお尻を汚しているのは早くきれいにしてほしいが、ウンチで汚れたおむつを替えてもらうのは恥ずかしい。恵子はそのまま項垂れている。
「恵子さん、女性の大事なところが汚れてはいけないし、このままじゃおむつ被れになっちゃうわよ。早くおむつを替えましょうね」
恵子はその言葉に現実に戻るとようやく頭を縦に振った。由樹はベルトを外すと恵子が歩行器から出るのを手伝う。美樹はおむつ替えに必要な物を持ってきた。
「きれいきれいしましょうね」
由樹は恵子のオクルミを脱がしていき、紙おむつを外す。その途端にほんのりミルクの匂いが付いた悪臭がする。昨日肉や魚類は控えていたにせよ、大人のウンチは臭う。美樹と由樹はそんなことは気にしない様子で外した紙おむつの汚れていない部分で恵子のお尻に付いた汚物をきれいにしてから、すぐに丸めてビニール袋に入れる。それからお尻拭きで念入りに恵子の下半身をきれいにしていく。恵子は恥ずかしくて両手で目を隠したままだ。
「仕上げに暖かいおしぼりで拭くわね、そしてシッカロールを付けるわね」
由樹は恵子に新しい紙おむつを当て始めた。恵子は布おむつじゃないのかしらと不思議に思うが由樹は紙おむつの上からオクルミを着せた。
「はい、もう少し歩行器に中で遊んでいてね」
恵子は不思議に思いつつも歩行器に入ると由樹はまたベルトで固定してしまう。同じおむつを当てられるのなら布おむつのほうがいいと思っていた恵子は由樹の顔を見た。
「あの、布のほうが」
「あら、布おむつのほうがよかったかしらね。でも午前中は続くと思うから我慢してね」
「え、それってどういう意味ですか」
「恵子さんは浣腸を嫌がるからミルクの中に下剤を入れたのよ。午前中はこの繰り返しね」
「そ、そんなひどいこと」
「だって浣腸を嫌がるから仕方なかったのよ」
恵子は自分のお腹からまた出るのかと思うとがっかりしたが、もう飲まされてしまったものはどうしようもない。しばらくすると恵子のお腹はまた、グッグーと音を立てた。

午前中に結局3回もお漏らしをしておむつを替えてもらっていると午前中のお宮参りに行く話しどころではなかった。恵子のお腹も落ち着いてきた頃はもうお昼だった。
「もう落ち着いたかな。そんなに強い薬ではないから安心してね。お宮参りは次回にしてお昼ご飯を食べに行きましょう」
 

おとなの赤ちゃん返り
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