9.メモリアル

マンションへの帰り道、3人は和菓子店に入った。赤や黄色などの和菓子から地味な色の和菓子はまるで宝石を並べたように展示されている。
「きれいね、食べるのが勿体くらいね。でも今日はキンツバと水羊羹をいただこうかしら」
「いいわよ、恵子さんもいいかしら」
「ええ、お任せします」
恵子は和菓子といってもどれにしたらいいか分らず2人に任せざるを得なかった。3人前を購入するとマンションへと帰った。
「さ、今日は日本茶と和菓子でお茶しましょう、美樹さんは写真を見せてね」
恵子は由樹がお茶の用意するのと美樹がパソコンにデジカメから写真を転送するのを見ている。昨日からの出来事を見れば今回の2回目のミルキーアルバイトが終わる。今回もいろいろあったなと一人考えていると由樹が日本茶と買ってきた和菓子をテーブルに並べていた。
「さ、いただきましょ」
美樹はお茶を一口飲んでキンツバを少し口に入れると口を動かしながらテレビとパソコンを操作している。
「さ、昨日の到着後のバスタオルおむつからかな」
美樹は昨日の朝からの出来事を振り返りながらパソコンを操作して写真を写し出していく。
「バスタオルのおむつはどうだったかしら」
「ええ、やさしい感じです。でもすこしかさ張るかな」
「そうね、いただき物で使っていないタオルケットもあるわよ」
「今回は急なことでこうなったけど恵子さん専用のおむつを用意しておかなきゃね」
恵子は3回目のミルキーアルバイトを想像したが、確かに誰が使ったかわからないおむつを当てられることを考えれば当然のことだ。もし赤ちゃんが布おむつを使ったとしてもそしていくら洗濯したとしても他人が使用したおむつをわが子に使うのは気が引ける。でも最近は使い捨ての紙おむつが主流だからそういうことは起きないだろうが昔はおむつを借りるということもあったのだろう。純真無垢な赤ちゃんなら別の赤ちゃんのおむつを借りたり貸したりすることも普通だったのはないだろうか。
恵子はそんなことを考えているとおとなでもおむつにお世話にならざるを得ない病院ではどうしていたんだろうとふと疑問に思った。レンタルでおむつを借りるということもあっただろうけどそういう場合は他人が使用したおむつを洗濯したとはいえ、自分の下半身に付けることになる。レンタルでなければ自前で用意して汚れたら持ち帰って洗濯して使っていたのだろうか。真剣な顔で考えこんでしまった恵子がそこにいた。
「恵子さん、どうしました。おいしいわよ。召し上がって」
「はい、いただきます」
恵子は我に返るとお茶を一口飲んでキンツバも少し口に入れる。
「おいしいです」
「そう、よかった」
「そしてファッションショーにキッズ写真館でしょ。かわいく写っているわ」
「次も機会があればいろいろとかわいいお洋服を準備しておきますよ」
「ありがとうございます」
恵子は3回目のミルキーアルバイトも夢じゃないと自信をもったが、あまり知らない人のいる前でのおむつ替えはやっぱり恥ずかしい。今回はそういうことが多かったのが心配だった。
「次はおっぱいよね。初めてのアルバイトの時は母乳も出ないしおっぱいは考えていなかったけれどやっぱりいいものね。乳首に吸いついている姿はやっぱり赤ちゃんらしいわ」
「でもやっぱり恥ずかしいです」
「そんなことはないわ。赤ちゃんらしい姿はちっとも恥ずかしくないわよ」
恵子は由樹と美樹のおっぱいを吸ったことを思い出した。同じ女性同士とはいえ、吸う役の赤ちゃんの方がやっぱり恥ずかしいと思う。
「それからおむつ替え室が故障中だったのは不幸中の幸いだったかしらね」
「あの大きな個室を知ることができたのだからよかったんじゃない」
「そうよね。でも、恵子さんは知らない人におむつを替えられたり見られたりするのを嫌がるわね」
「ええ、このアルバイトで美樹さんと由樹さんに替えられるのは慣れてきましたけど、知らない人は嫌です。やっぱり体は大きいのですからおむつを当てているところを見られるのもちろん、ましてやおむつを替えられるのも嫌です」
恵子は言うべきことは言っておこうと恥ずかしさをこらえて小さな声で説明した。
「でもあのスーパーの中年女性の警備員さんは嬉しそうにしていたわよ。赤ちゃんのお世話はたとえ汚れたおむつを替えることでもうれしく微笑ましいものよ。汚い物は汚いけどきれいにしてあげてこそ赤ちゃんも可愛くなるのですから。おむつが汚れたままなんてかわいそうでしょ」
「それはそうですけど」
「それに恵子さんは幼児デイサービスの小さな幼児さんたちの前でもおむつ替えは嫌がっていたし、本当の赤ちゃんはいつどこでお漏らしするか分らないからどんな場所でもどんな状況でもおむつ替えは避けられないのよ。恵子さんの次の課題はそこかしらね」
恵子はそれはやっぱり避けたいが、アルバイトとしては魅力もあるので、どうしたらいいのか分らない
。そういう風にならないで次回のアルバイトもできるような雰囲気にしておきたいと一瞬黙ったが恵子はすぐに思いついたように顔が明るくなった。
「大人の体で人前でおむつを替えるということはやっぱりモラル的によくないと思いますので」
「そうよね、猥褻物陳列罪になっちゃうわ」
恵子はその美樹の一言にクスッと笑うとさっきの心配もどこかに消えていた。だが、今度は美樹も由樹が黙って考え込んでしまった。
恵子は由樹と美樹がやっぱり人前でのおむつ替えを考えているのかもしれないと思うと心配になっていく。前回と同じくあの話が出たときにはこれで2回目のアルバイトが終わると思うと、少し寂しいが一つの区切りを感じている。
「今回も写真はブログに掲載させていただいていいかしらね。条件は前回と同じよ」
「はい、もちろんです」
恵子の顔に笑顔が戻り、財布が暖かくなって2回目のアルバイトは終了した。

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保男はパンツ式とテープ式の紙おむつを試していたが、ミルキーアルバイトで経験した布おむつを忘れることができなかった。いろいろ考えてみると手拭いでも布おむつにしてしまえばいいかと思うが、布おむつを包むおむつカバーがないことに気づくとまた振り出しかと思う。それでもおむつカバーのように防水機能はなくても手拭いみたいな布をおむつにしてそれを身に付けられるようにすればいいのだからと考えると紳士物でもブリーフの下着でできるかなと思う。保男はいつもトランクスなのでトランクスだとピッタリと布おむつを包めないがブリーフならおむつカバーに似ているなと気が付く。でもお漏らししたら布おむつから浸み出てブリーフもおしっこで濡れて部屋の中も汚れてしまうだろう。
でもお漏らしは諦めれば布おむつの感触に似ているかもしれない。
そう考えながら総合スーパーでブリーフと手拭いを3枚を買ってみた。これなら布おむつに近い感触が得られると思うとなんだかうれしくなってマンションに帰ってくる。
床に手拭いを敷いてみる。その上にもう1枚を重ねてみる。とりあえず2枚で試してみようと思うと保男はズボンを脱いでテープ式の紙おむつも外した。
敷いた手拭いの上に腰をおろして両足を広げた。自分の股の間に手拭いがお尻の方から延びている。手でその手拭いをたどり寄せて股からお腹の方に引いてみる。布おむつのようにお尻から股を通りお腹まで包んでくれた手拭いはまさしく布おむつだった。
「大分いいけど、安定していないな。これを優しく包んでくれるカバーがあればいいのに」
そうは言ってもおむつカバーはないので、ブリーフの封を切って足からブリーフを穿いてみる。膝を通し、手拭いのおむつを包むように腰までブリーフを上げるとそれはまさしくおむつカバーだった。でも防水機能はないのでお漏らしはできないおむつカバーだ。それでも手拭いのおむつを包んでくれたブリーフはまさしくおむつカバーのようだった。
お尻から股にかけてそしてペニスも優しく包んでくれている手拭いのおむつをブリーフがちゃんと包んでいてくれる。
「あーあの感触だ」
保男はそのままで携帯を手にとるとミルキーアルバイトのサイトを見た。そこには今まで見たことのない写真が掲載されていた。
可愛いミニスカート付きのロンパースを着た大きな可愛い赤チャンがそこには写っていた。さらに赤ちゃんの女性が今までになかった母乳を飲んでいる姿もあった。保男は次回のアルバイトでこんな風にされたらいいなーと憧れてしまった。そのとき携帯へメールが届いた。
「次回のミルキーアルバイトをあなたにお願いしたいと思います。詳細は電話で話しましょう」
保男はうれしくなってしまいすぐに携帯から連絡をしてみた。アルバイトの日時は少し調整してすぐに決まったが、美樹から保男に相談が出された。
「保男君、ブログに掲載された新しい写真を見てくれました?」
「ええ、可愛いベビー服の写真とかとても良かったです」
保男は素直に可愛いベビー服に包まれた女性の姿を思い出しながら素直に褒めた。
「そう、よかった。相談というのはそのベビー服の事なんだけど」
「ベビー服の事、というと?」
「女の子のスカート付きのロンパースとか、フリル付きのブルマとか、ワンピースとかね、いろいろベビー服を用意しているんだけどね。みんな女の子用なのね。それだけでも大変なのよね」
「ええ、それで相談というのは?」
「だから、アルバイトでは女の子用のベビー服を保男君にも着て欲しいな、という相談よ」
保男は一瞬黙ってしまった。ロンパースといえば太股から足元まで足を出している赤ちゃんを見かけたことがある。寒い冬なら素足を隠すタイツなどを穿いている姿が目に浮かぶが男の子のズボンを穿いているベビー服とはやっぱり違う。男の俺が女の子のベビー服を着るということは、女装ということか。でも前回も本人と知られないように顔だけでは女の子のようにお化粧してもらったが、服はオクルミなので女の子も男の子もなかった。それが今回は女の子用のベビー服を着るのか。
「保男君、どうしました?」
「ええ、聞いています」
「だからお返事はどうかしら。前回も顔は可愛い女の子のようにお化粧してあげたでしょ。それと同じよ。保男本人と分らないようにするためにも顔のお化粧だけじゃなく、ベビー服も女の子用を着ていればまず男性とは思われないわよ。そのためにも女の子用のベビー服を着て赤ちゃんになって欲しいの」
保男は男の本人とは分らないようにするために顔に化粧をしてベビー服も女の子用を着ることが大事よ、と言われるとそのまま声を出さずに頷いていた。
「もしもし、どうしたの。お願い出来るかしら?」
保男は声を出しての返事が恥ずかしかったが、美樹の催促に思わず、はい、と返事をしてしまった。

 

おとなの赤ちゃん返り
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