クリニック悪夢

 
日本の成田空港から空路約13時間、ロンドンのヒースロー空港は珍しくない霧の天気だった。着陸できるのかどうか、窓の景色をみながら不安を抱いていたのは、和夫だけだったかもしれない。高度がだんだん下がっていくのを眠気眼で感じていながら窓の景色を見るとそんなことを感じていた。窓からの景色とは言ううものの霧で何も見えないことが余計に不安を感じさせていたのかもしれない。そんな中、どんどん高度を下げているのを感じていると、ドスンという音とともに逆噴射の大きなエンジン音が聞こえてくるなり、台地に着いたタイヤが急にブレーキがかかり、安全ベルトをしていても体が少し前のめりになるのを感じる。しばらくすると、逆噴射と急ブレーキは穏やかになり、だが、それでも車で高速道路を走っているような速度なのだろうが、飛行機は進みながらカーブを右に左に切りながら、気がつけば空港の建物が身近に見えてくる。無事に着陸したな、と安心しながらもう一度窓の外を見ると、やはりそこは外国の風景で日本とは違う感じを受ける。さっきまで寝ていたメアリーに目を向けると着陸の際の振動や衝撃のせいかメアリーも目を開けて窓からの景色を見ていた。
「おはよう」
「グッモーリング」
お互いに目を見つめて軽い挨拶を飛行機の中の隣席どうしで交わすと、眠りの世界から現実の世界に舞い戻る。
「やっと、着いたね。ロンドンだ」
「ここからも遠いのようね、リバプールは」
「電車や車でも移動できる距離をもう1回フライトすればよいのだから、もう少しさ」
「そうよ。今日中にはリバプールに移動よ。今夜はよく寝て時差ボケを治さなきゃ。日本時間ではもう夜中だろうけど、ロンドンはまだこれから夕方ですもんね」
二人は早めの夏休みでイギリスのリバプール観光に招待されていた。リバプールと言えばビートルズで有名な街だ。和夫がビートルズを好きだということで1年以上前にその話を聞いたメアリーの父が招待してくれた旅行だった。ロンドンにやって来るのは1年半前の結婚式以来だ。今回はリバプールのビートルズ観光をメインにしようとか、有名観光場所に遊びに行こうとかの話をしながら計画してにきた。帰りにはメアリーの里帰りのためにロンドン経由で日本に帰国の予定だ。メアリーの両親はロンドンにいるが、リバプールには伯父がいる。その伯父は、リバプール郊外にあるダディの経営する精神病院の院長を務めている。
ロンドンで2時間待って、マンチェスター行きの飛行機に乗る。日本からリバプール行きの直行便はもちろん、リバプールに近いマンチェスター行きの直行便もない。ロンドンからリバプルーへは、電車でも3時間くらいかかる。3時間も揺られるよりは、1時間のフライトの方が楽ということから、ロンドンからマンチェスターまで空路にしたのだった。マンチャスターまでの国内線の1時間弱のフライトは特に苦にならずに時間を過ごすことができた。マンチェスター空港に着くと、伯父の手配してくれた車で伯父の家に向かう。リバプール郊外の伯父の家までは、1時間弱だ。夜の7時に伯父の家に着いて、風呂に入り、夕食と懐かしい伯父との会話を楽しむと、明日の予定を確認した。ダディからは精神病院の新しい部屋ができたので、その部屋を見てほしいという依頼があった。特に精神病院の新しい部屋と言っても興味はなかったが、その見学の後は、リバプールの観光が待っていると聞けば仕方なかった。その話を最後に和夫とメアリーはほどほどの時間で寝てしまった。よく眠れば時差ボケを防ぐことができる。
ダディの経営するリバプール郊外の精神病院までは伯父の車で10分ほどだ。ベッド数は200を超えるというから大きなな病院だ。中には病室というより、牢屋のように鉄格子のある部屋もあったが、これらは徘徊防止や重症患者用に部屋だった。その中にナースステーションもある。ようやくなれて来た日本人のナースとベテランのナースのが和夫の入院を待っていた。
「恵子、今度のクランケは日本人だそうよ。久しぶりね。浮気抑止入院は。それも日本人は初めてじゃないかしら」
「ジェーン、その患者さんは、同意のもとで来るのかしら?」
「たぶん、知らないのでしょう。ほとんどのイギリス人や外国人も何もしらないまま、連れてこられて、急に入院させられるのがほとんどよ」
「でも本当に浮気が治るのですか?、どんな入院治療なのかわからないから」
「そうね、教えてあげるわ。でも恵子が日本人でよかったわ。浮気抑止での日本人の入院は初めてだから。頼りにしてるわよ」
「ええ、日本語や、日本人とのコミュニケーションは問題ないわ」
「ピーピー」
そこにナースコールが鳴った。だが、病室からのナースコールではない。入院患者が到着したというお知らせコールだった。
和夫は受付で、病院の見学にはセキュリティのための契約が必要と言われ、メアリーを見ると既にサインしている。長文の英文を読む気もせずにそのままサインをする。すると叔父が二人を応接室に案内し、紅茶を出してくれた。しばらく談笑をしていると和夫はすごい睡魔に陥る。時差ボケでねむいのかなと、思ったときには、メアリーがソファに横にしてくれた。安心するとそのまま眠りに陥った。叔父はナースコールのボタンを押すとメアリーに言う。
「後は病院に任せなさい。浮気抑止入院は5日間だ。その間、メアリーはロンドンに行って里帰りをしてなさい」
「ええ、そうするわ。では、叔父さん、和夫をよろしく」
「ああ、大丈夫だ。安心して行っておいで」
メアリーが応接室を立ち去ると、ほぼ入れ替わりにナース2名がベッドを押しながら応接室に入ってきた。和夫はソファからベッドに移動されると、そのまま病棟へと移動される。和夫が入院した部屋は個人部屋だ。特に普通の病室と変わったところはないが、病室のベッドは、少し変わっている。病人をベッドに固定するためのロープと移動式の板があるのが奇異に見える。和夫はその奇異なベッドに移されるとナースによって裸にされていく。和夫はさっきの紅茶の中に混ざっていた睡眠薬でぐっすり寝ている。
ナースは、和夫を裸にすると紙おむつを当てた。そして今回の入院服のロンパースを着させると足首に分厚いロープを巻いていく。そのロープはベッドの上1メートルくらい上にある移動式の剛鉄製の板につながっている。
「これでベッドからは脱走できないわけですね」
「そうよ、浮気癖が直るまではベッドからは離れないのよ」
「でも、おむつを当ててベッドから離れなくするだけ浮気が直るのですか?」
「そうね、そこが院長が考えた治療法があるのよ。すぐにわかるわよ。そうそう最初はとんでもない状況に暴れる人が多かったから手もロープで縛りつけておきましょう。事情を説明して納得してくれたらすぐに外しますから」
「でも、こういう事情をすぐに受け入れてくれるのですか?」
「時間がかかる人もいるけどほぼ受け入れるわよ。やっぱり受け入れざるを得ないものね」
「どうして受け入れるのですか?」
「まあ、もう少しでミスター和夫も起きざるを得ないから。そしたらすぐにわかるわよ」
ナースは薄い毛布を和夫をかけると病室を離れていった。そして念のため病室には鍵をかけていく。
 
和夫は、激しい尿意と便意を感じながら急に寝入ったしまった睡眠から目が覚める。さきほどの応接室での紅茶には睡眠薬と利尿剤そして下剤も含まれていた。あれから1時間くらいだろうか。まだ、睡眠薬の効き目で眠いのだが、尿意と便意が睡魔を吹き飛ばしていた。
「ここは、どこだ」
病院の個室のようだ。ベッドにテレビに、部屋の隅にはトイレと洗面所がある。明らかに個室の病室と思われる。なぜおれがここに横になっているのだろう。そう、あの応接室で紅茶を飲んだのが、最後の記憶だ。まずは、起き上がろうとするが、手にも、足にもロープがありベッドに固定されている。
「くそ、すぐそこのトイレに行きたいが、身動きもできやしない、そうだナースコールだ」
体を縛り付けられているためなのか、丁度右手にスイッチらしいものがある。和夫はすぐにナースコールを押した。そして、差し迫った尿意と便意により、和夫は何度も何度もナースコールを押した。
「ピピーン、ピピーン」
ナースステーションには、個室病室からのナースコールが響く。すぐにモニタを見て緊急事態ではないことを判断すると、特に急ぎもせずに、ナースのジェーンと恵子は和夫の病室へ向かう準備をする。
「起きましたか」
「いいから、トイレに行かせてくれ、このロープを解いてくれ」
「それはできません」
「できないって?こんなことして訴えるからな」
「それもできません。あなたは、この病院でこの治療をすることに同意した契約書にサインしてますから。受付でサインをしましたよね。それに奥さんも同意の契約済です」
「院長の伯父を呼んでくれ、あーもう漏れちゃいそうだから早くしてくれ」
和夫の額には汗が滲み出ている。尿意と便意がかなりのところまで、来ている証拠だった。ジェーンと恵子はそんなことを気にもせず、カルテに何かを記入している。
「院長先生があなたの主治医ですからいつでも来ますが、入院に関することは私たちナースがお聞きします」
「何も悪いところはないのに、なんで病室にいなけりゃいけないのか」
和夫は尿意を便意を必死にこらえながらナースに食い下がるが、その声はだんだん途切れ途切れになっていく。
「あなたは、浮気抑止入院をしました。これから浮気癖が直るまではこのベッドから離れることはできません。食事も排泄も全てここで行います」
「そんな、あーお腹が痛い」
「排泄はおむつの中にしてください」
「え、おむつ」
「そうです。ミスター和夫はおむつを当てていますので排泄しても大丈夫ですよ。早くお漏らしをして楽になったほうがいいですよ」
そう言うとジェーンは、和夫の額の冷や汗を吹いていく。そしてジェーンは腹部を押していく。和夫の腹部の感触を確かめながら腹部を押す。
「もう限界に近いですから、両方とも排泄してください」
「そんなこと言ったって。はやくロープを解いてトイレに行かせてくれー」
「腹部がもう限界ですから早く排泄してください。ミスター和夫。おむつを当てているからノープロブレムですよ」
「あー」
和夫はもう限界と感じながらも我慢をしていたが、もうだめ、とばかりに下半身の踏ん張りの力を弱めた。その瞬間、腹部で反乱を起こしていた便意は容赦なく和夫の体から出て行った。
「ブ、ブリ」
ガスを伴った排泄物は、力を弱めた和夫のアヌスから猛烈な勢いで出て行った。次の瞬間には、こちらも溜まっていた尿が前の穴から勢いよく出ていく。我慢をし続けていた腹部の反乱がようやく少しずつ治まっていく。だが、和夫のアヌスから出てきた半固形物は確実に和夫のアヌスから周辺の臀部に広がっていた。そして前からは勢いが強い黄色い温かい液体が和夫に腹部に広がっていく。紙おむつに吸収性があるにせよ、多くの液体が腹部からお尻の方や腰を伝って下に流れていく。だが、それを少しずつは紙おむつが吸収しているようだ。
「楽になりましたか?ミスター和夫」
和夫は返事をしたくもない。この両方のおむつの中へのお漏らしをどうしたらよいのか。当然、病院なのだから、おむつを替えてくれるのだろうが、排泄物を見られるのも恥ずかしい。しかし、両方のお漏らしで汚れた下半身は早くきれいにしてほしい。言うに言えないおむつ替えの期待をそのままにして和夫は目を閉じてそのおむつ替えの瞬間を待っていた。
「それでは、院長に報告してきますので、そのままでお待ちください」
「え、ちょっと待って」
「何か?」
「きれいにしてくれるんだろう」
「何をですか?」
「何って、決まっているだろう」
「院長に報告して、経過をみます。そのままでお待ちください」
「ちょっと、待ってくれ」
ジェーンと恵子はその会話を最後に病室を出ていく。恵子は和夫の様子を丹念にカルテに書きこみながら歩いていく。
「おい、待って」
和夫はドアを開けて出て行こうとするジェーンの後ろ姿に最後の言葉をかけるが、ジェーンに引き続き恵子も病室からでていくと、「カシャ」という部屋の鍵をかける音を最後にまた静けさがやってきた。
「どうしよう」
おむつの中の下半身を汚した物は今まで経験したことのない気持ち悪さを感じさせてくる。吸収性がよいとはいえ、このままではおむつかぶれという状態になってしまうのではないかと危惧する。しかし、まだ、効き目の残っていた睡眠薬の効き目は和夫を再び寝むりにつかせようとする。睡魔より大きくなった便意と尿意の脅威がおむつの中に放出されてしまうと、まだ効き目の残っていた睡魔が襲ってくる。和夫は泣きたくなる。目を閉じていると自然と涙がこぼれていく。その涙のしずくが頬を伝わって落ちていくのを感じたのを最後に和夫は汚れたおむつを当てたまま寝むりについていった。
 
「ジェーン、あのままではミスター和夫はおむつ被れを起こしてしまいますけど」
数時間後、不安に思った恵子はジェーンに問う。ジェーンも恵子も和夫の専任ナースというわけではない。他にも担当のクランケを担当しているが、数時間後にナースステーションの一緒になった恵子は心配になってジェーンに聞く。
「そうね、そろそろかな」
「ピピーン、ピピーン」
その時丁度、和夫の部屋からのナースコールが鳴った。ジェーンと恵子は目を合わせると同時に頷いた。
「ハロー目覚めましたか、ミスター和夫」
「何か、お尻がひりひりする。早くきれいにしてくれ」
「そうねでも、その前にやるころがあります」
「そんな、このままじゃお尻が被れちゃいそうだ」
「そうです。もうおむつ被れは起きているでしょうね」
「だったら早くきれいにしてくれ」
「その前に、今回は浮気抑止入院です。契約も済んでいますが、本人がこの治療を進んで受けることに同意して協力する態度がない限り、汚れたおむつはこのままです」
和夫は呆れて物も言えないが、メアリーも同意しているとすると本当に浮気を治すための入院と思える。それに伯父も知っているはずなのにちっとも顔を出さない。和夫はおむつ被れはもう起きているお尻からのひりひりした痛みとその気持ち悪さには、もう辟易していた。
「今回このまま、浮気抑止入院をしますか?治療を進んでうけますか?ミスター和夫」
「わかったよ。治療を受けるから、きれいにしてくれよ」
「何をきれいにしますか?」
「はっきりと言わないと何のことだがわかりません」
「汚れた下半身をきれいにしてくれよ」
「お漏らしをしたおむつを替えてください、と言うこと、それと浮気抑止入院をします、と千回大きな声で言ってください。その言い方と態度で決めます。それから、逃げ出そうとしないことです。おむつの下には防水シートを敷いていますので、ベッドを汚すことはないと思いますが。その行動と態度で決まります。そのまま、汚れたおむつを当てたまま、もう1晩このまま過ごしますか?それとも千回の宣言をしておむつをとりかえますか?」
「わかったよ。言うよ千回言えばいいんでしょ」
「和夫、やけになって言ってもそれはカウントされません。正直に誓った心からの言葉を千回です。私たちはモニターで監視してますから、始めてください」
「お漏らしをしたおむつを替えてください、そして浮気抑止入院をします」
「お漏らしをしたおむつを替えてください、そして浮気抑止入院をします」
和夫は仕方なく、だが心をこめて言い始めた。もうお尻のひりひりする痛みと気持ちの悪さは限界だ。素直にその言葉を繰り返し言い始めた。
それを確認すると、ジェーンと恵子は壁の隅いある何かのスイッチを入れた。そして、二人とも病室から出ていこうとする。
「ミスター和夫、この機械であなたの声を録音しています。千回を数えるまではこのままです。そして声とこの病室はモニタされていますので、繰り返してください。その後ドアは閉められ、カシャという鍵の閉まる音が響く。それでも和夫は仕方なく、さきほどの言葉をくり返す。お尻の気持ち悪さを忘れようと必死に指と頭を使って千回を数える。
 
「ミスター和夫の具合は?」
伯父の院長はジェーンに問う。恵子は今後の浮気抑止入院の治療方法や病状確認に真剣だ。ジェーンはにこりと笑ってから説明をし始めた。
「院長、第一段階はクリアと思います。もうすぐ入院宣言の誓いが千回です。また、おむつ被れがそろそろ始っているので、最初にしてはもう一度はきれいにする必要があると思います」
「グッド、では入院の第1日は無事終了だね。では、宣言が終わったらきれいにしてあげなさい」
伯父はモニタの中に映る和夫の症状とその宣言の声を聞いて判断をした。ジェーンは音声のカウント機の数を確認すると病室への移動の準備を始めた。カウントはもう950回を超えている。カウント機は録音した音声がただしく発生された場合にその数を正確に記録している。ジェーンはおむつ交換用のタオル、おむつ被れ用の軟膏、そしてビニールの手袋、最後に交換用の紙おむつとカルテを手にとると恵子に声をかける。
「恵子、カウントは?」
「あ、はい、今1000回になりました」
「では、行きましょう」
 
和夫はもう自分の宣言が1,000回になったと思ったが、そのまま少しは繰り返していたが。そこに病室のドアが開かれた。
「ミスター和夫院長先生のOKが出ました。もう、宣言はやめてください。そしておむつを替えますので静かにしてください」
和夫はようやくお尻のひりひりの痛みと汚物をきれいにしてくれることでうれしかった。こんなにナースの来るのが待ち遠しかったのは他になかった。ジェーンはベットの脇にあるレバーを回し始めた。すると和夫の両足が持ち上がっていく。そして、別のレバーを回すと、和夫の両足は左右に広がっていった。
「OK、ストップ。ここでロンパースを脱がしましょう」
「ロンパース?」
「そうです。この病気での入院服はロンパースです。赤ちゃんのように暴れたり、おむつが必要に患者には、ロンパースのように上と下がつながっているほう服でないといけません。おむつを替える時にもロンパースでないと大変ですから」
和夫はロンパースと言えば赤ちゃんの着る洋服と思っていた。それがなぜ俺が着ているのか、不思議に思う間もなく和夫の両足の付け根からパチ、パチというホックを外す音が聞こえてくる。両足の膝が露出し、太もも、と続き紙おむつも露出された。和夫は恥ずかしさのあまりに上を向いて目を閉じる。
「もうすこし、両足を上げましょう。これでは、べッドが汚れてしまうかもしれません」
おむつを当てたお尻が軽く浮くくらいまで両足を上げられると、紙おむつを外そうとしてきた。
「ミスター和夫。だいぶ吸収されていると思いますが、動かないでください」
動きたくでも両足も両手もベッドにロープで縛りつけられている。和夫は仕方なく、イエス、と小声で言う。ジェ―ンと恵子は慣れた手つきで紙おむつを外していく。するとおむつ被れを起こしている原因の汚物やアンモニアの臭いが立ち込める。ナース2人は構わず、温かいタオルで和夫の下半身をきれいにしていく。そして、手袋をすると、おぬつ被れ用の軟膏をたっぷりと塗っていく。嫌な臭いが軟膏の臭いで消えていくと、新しい紙おむつが和夫のお尻の下の入れられた。両足は少し弱められ紙おむつの上に和夫のお尻が着地する。恵子は慣れた手つきで紙おむつを当てていく。
「さ、きれいになりました。もう夕食の時間です。これから手のロープを外します。静かに入院治療を受けてくださいね」
恵子は機械的な説明をする。ジェーンは汚れたおむつ一式を持って部屋から出ていく。恵子は和夫の手のロープを外して、べッドの上で食事ができるように和夫のお腹の上あたりにテーブルを置く。
「さ、起き上がれますか」
「いて、お尻が痛い」
「大丈夫ですよ。いいおむつ被れの薬をたっぷり塗りましたから。それでは、食事を運んできますね」
夕食は野菜中心のヘルシーな食事だった。和夫は1人で食事するさみしさよりも汚れたおむつから解放されたがうれしかった。全てを完食すると暇になる。部屋にはテレビもあるが、英語には自身がないし、近くへ行ってスイッチを入れることもできない。しばらくすると恵子が食事の後片付けにきた。
「今日はもうしばらくすると消灯です。昼間よく寝てしまいましたから寝付けないかもしれませんが、規則ですので」
「あのすいません。トイレに行きたいのですが」
「トイレは使用できません。浮気治療が治るまでは、あなたのトイレはそのおむつですから」
「そんな」
明日も治療に忙しいですから、早く就寝してください」
「明日もですか。何をやるんですか?」
恵子は構わず病室を出て行く。鍵がかかると同時くらいに部屋の電気も消された。消灯の時間らしい。昼間の睡眠薬による睡眠で少し眠れなかったが、時差ボケによる睡魔がやがて和夫を眠りに誘う。
 
次の日の朝、和夫は尿意で起きた。時計を見ると6時だった。ナースを呼んでもやはりトイレには行かせてくれないのだろうか。妙にメアリーが恋しいが呼んでもここには居ない。今頃はロンドンで両親と一緒に休日を楽しんでいるのだろうか。そのまま、尿意を我慢してうとうとしていると朝8時の検温の時間がきた。
「グッモーニング」
「グッドモーニング」
ジェーンでも恵子でもない別のナースに何かの期待を寄せるが、機械的に検温をするとすぐに出て行ってしまう。次の朝食の準備もまた、違うナースが準備をしてくれたが、そっけない。朝食もおいしく食べることができたが、尿意はもう限界だ。
「あの、トイレに行きたいのですが」
朝食の片付けにきてくれたナースに依頼をしてもやはり、答えは同じだった。朝食の刺激を受けた胃腸は尿意だけではなく、朝の便意を大きくしていく。だが、もうおむつの中に漏らすのはこりごりだ。必死に我慢をしていた。
「グッモーニング」
ようやく昨日のジェーンと恵子が入室してきた。手にはノートPCを持っている。一体なにをするのだろう。
「朝のお通じは済みましたか?」
「いや」
「健康状態を見るためにも排泄物は早く体の外に出してください。今日のエクササイズが待っていますからね」
「エクスササイズですか?」
「そうです。このノートPCのワープロで、文章を打ち込んでもらいますよ。もう浮気は絶対にしません。メアリーを愛しています、と千回です」
「また、千回ですか?」
「そうですよ。忙しいですよ。ですから早くお通じを出してください」
「いや、出ない」
「でなければ、浣腸をして排泄してもらいますよ」
「え、いやしたいのですけど、トイレでしたいから」
「それはだめです。早く出してください。いろいろなエクササイズが終わらないと退院できませんよ」
「そんな、どちらにしますかと言われても。。。」
和夫はそんな質問には答えたくもないし、答えられない。ジェーンはしばらく和夫の様子をうかがっていたが、恵子に目ぐ場背をすると、和夫の手をまらロープで縛りつけようとする。ナース2人の力は以外と強かった。あっという間に手を縛られると、また、おむつ替えのように両足が上げられていく。ロンパースも脱がされおむつを外されると、一気に浣腸をさせられた。2本目が挿入されたところで、すばやくおむつを当てられるとロンパースも着させられる。
「5分は待ってくださいね」
「あーお腹が痛い。ただでさえ、尿意と便意を我慢していたところに強制的に浣腸をさせられた和夫の腹部からは、グーという音がひっきりなしにする。
「後、2分ですよ。そしたらすっきりおむつの中に出して楽になってください。そして早くエクササイズをしましょう」
和夫はあと2分と言われてももう限界だった。お尻から大きなおならの音とともに汚物が出ると同時に尿も噴出していた。
和夫の目からはなさけないことを理由に涙が落ちてくる。ジェーンはそれを見るとエクササイズの準備を始めた。
「あ、あの、おむつをきれいにしてください」
「だめです。さっき説明したエクササイズが終わってからです。日本語でタイプしていいですよ。もう浮気は絶対にしません。メアリーを愛しています、と千回ですよ」
「そ、そんな」
和夫はまた汚したおむつのまま数時間も過ごすのはもうたくさんだと、大きな声をだした。
「もうやだ」
 
***
 
その自分の大きな声に和夫は本当の眠りから覚めた。今のは夢か。汚れたおむつを当てたまま、ワープロで同じ文章を千回もなどとんでもない。その夢は頭から離れない。浮気抑止入院など夢の世界と思いつつ、冷や汗を拭くのだった。
 
 
 

大人の赤ちゃん返り
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