赤ちゃん外出
(リストラだ、私は赤ちゃんになりたい)


和夫のそんな気持ちを察したのか、光江は散歩にいくことを前提に話しをし始めた。ここで、また、赤ちゃん言葉を使うと和夫の気持ちが変わるかもしれない。光江は自然な気持ちで散歩に行こうという雰囲気をできるだけ高める会話を始めた。
「外は少し暗くなってきたし、すぐ近くの公園まで行ったらすぐに引き返してきましょう。夕焼けが見えるかもしれないわ」
和夫は散歩へは行きたくないが、あまりに変わってしまった自分の顔にこれなら誰だが分かるはずもないし、まだ、引越してきたばかりだから、自分を知っている人間もいないだろうと考えていた。そして近くのあの公園までならいいかと思っていた。朝からトイレへも行かせてもらえず家の中にずっといたせいか外へでたくて仕方が無い気持ちもあった。そして自分がおむつをしていることも忘れていたのだった。
光江は和夫の手を引いて玄関までくると自分の靴を履き、次に和夫に赤い靴を履かせた。和夫はやはりこんな格好では恥ずかしいという気持ちから玄関に座りこんでしまった。
「いま、靴を履かせてあげますね」
光江はあまり赤ちゃん言葉を使わずに和夫に靴を履かせた。光江は後もう少しで外へ出れるからここで和夫の気持ちが変わったら大変と自分に言い聞かせていた。靴を履かせ光江は和夫の手を取って外へ出ようとしたが、和夫は立ちあがらない。
「すぐ、近くだし、すぐ帰りましょう。ぜんぜんおかしくないわ、誰だかも分からないわよ」
光江は必死に和夫の恥ずかしさを取り除く言葉をかけ、そっと手を引いて外へでた。和夫は外へ行きたい気持ちを疎外するものもなかったので、重い腰をあげてしまった。
2、3分も歩いただろうか、光江はまたママさんに戻った言葉を話し始めた。
「おむつを取り替えてくればよかったわね、かずおちゃん、おむつ大丈夫、濡れていない?」
和夫は自分がおむつをされ、女の子のようにミニスカートを履いていることを再認識して立ち止まった。
「帰ろう、もういい」
「ごめんなさい、もう言わないわ、本当に。もう公園が見えてきたわよ」
本当に謝る気持ちがあるのかないのか、光江は和夫の手をきつく引いて公園へ向かっていく。公園には暗くなってきたとはいえ、まだ2,3人の子供は遊んでいた。光江と和夫はベンチに腰掛けて子供たちを見ていた。
「かずおちゃん、このベンチならおむつ交換できるわよ。あれから変えていないから、本当に濡れていない?濡れていないならおっぱい飲みましょうか」
和夫はもう怒りたかったが、光江の言葉を無視していた。ここで、喧嘩でもしておむつだの、和夫という男の名前が聞こえるのはまずい。いくら子供とはいえ、大人の男がこんな格好をしているのは知られたくない。
光江はかまわずさらに赤ちゃん扱いの言葉を言ってきたが、和夫はかまわず無視して1人で帰ろうとした。
「わかったわよ、もう黙っているからもうしばらくここに座っていて。今度は本当よ」
そして二人はしばらく夕焼けをみていた。さらに暗くなり子供たちが帰り始めた。和夫はいい空気をすったせいか腹が減ってきた。
「腹が減ったからもう帰ろう」
光江も空腹を覚えていた。
「そうね、今日はなにかご馳走しましょうか?お寿司、焼き肉?」
和夫はこんな格好で外食をする気はなかった。
「帰るぞ」
和夫はそう言うと歩きはじめた。謝りながら追いついた光江は和夫に腕組をしてきた。そしてそのまま家に帰ってきた。
光江は家に着いてから、今日は夕飯の後で1つ相談があるのと和夫に言い、夕飯の買い物へ行った。1人になった和夫は外のいい空気を吸って腹も減りいい気分になっていたが、また光江が何をいいだすのかと思うと少し憂鬱でもあった。しかし、おむつもし、お洩らしもし、肛門まできれいに拭いてもらい、さらに女装までして外へも出た。トイレも禁止された。もう怖いものもこれ以上恥ずかしいものもない、と思っていた。何でもしてやるぞと思いつつ、自分の女の子の赤ちゃん姿に見とれていた。そこにはおむつは見えないにしてもおむつをしてかわいい女の子が着るようなミニスカートを履いた和夫がいた。和夫はリストラのことや再就職が決まらないことは忘れていた。いや、こんなかわいい女の子の赤ちゃん姿になってそんなことはどうでもいいような気持ちになっていた。そして、外の冷たい空気を吸っていい気持ちにはなっていたが、履き慣れないスカートで足元から冷えたのか尿意を感じていた。和夫はトイレに行こうかとも思ったが光江の帰りを待っていた。光江が帰ってきてもトイレには行かせてくれないだろう。しかし、このままおむつの中に小便をするというのもできない。今日の午前中のように光江におむつの中にしなさいと赤ちゃん言葉を架けられたいのか、自分でもわからないまま、尿意を我慢していた。
そして和夫は三面鏡の前に立ち、自分でスカートを捲ってみた。そこには白いタイツには隠れているが、光江が作ってくれたかわいいおむつカバーの絵柄が浮き出ていた。そのおむつカバーと中に潜んでいるおむつの感触を確認していた。急所からお尻へかけて少し厚でのおむつの布は和夫の下半身に妙な感覚を覚えさせていた。それを和夫は自分の手で腹の上あたりから押さえ、自分の急所も大きくなっていることを実感していた。尿意がまた大きくなってきた。トイレに行こうか。そう思うが光江の言葉に操られているのが自分でも分かる。このまましてしまおうという気持ちが膨らんで来ていたのだった。光江はまだ帰って来ない。小便をしてしまってあまり長い時間光江が帰って来ないのでは小便が冷たくなって気持ちが悪くなってしまう。どうしようかと思いつつ、横になり、和夫は始めて自分でおむつの中に小便をしてしまった。

しばらくすると光江が帰ってきた。和夫はどう言って小便をもらしたおむつを変えてもらおうかと思った。光江は帰ってきてもおむつが汚れているかどうかを確認してこない。さっきの公園のように要らないときは不必要に赤ちゃん言葉をかけてくるくせにこういう時に限って何も言ってこない。
「今日の夕飯はすき焼きにしたわ、このほうが準備が簡単だから」
光江は普通の言葉を話し続ける。和夫はだんだんに洩らして冷えてきたしまった小便に手を焼いていたが、光江に言う勇気がない。ましてや自分でおむつ交換もしたくない。その時、和夫は冷えた小便で思わずブルブルと震えてしまった。
「どうしたの、かずおちゃん、寒いの?」
「いや、そういうわけではないんだけど、少し寒くなったね。スカートは冷えるよ」
和夫はごまかしてそう言った。しかし感の強い光江はすかさず聞いてきた。
「おむつ、大丈夫、濡れていない?あれからおむつ交換していないものね」
そう言って、和夫のスカートを捲りあげ、タイツをずらし、おむつカバーの中に手を入れた。
「まあ、大変、おしっこ出てるわよ」
光江はうれしそうに新しいおむつとおむつカバーを用意してくる。和夫は、本当は“ママ、おしっこ”などと言い、光江に甘えたいのだが、そこまでは言葉に成って来ない。光江はいつもとは違い、てきぱきとおむつ交換の準備をして和夫のおむつを交換し始めた。
「かずおちゃん、偉いわね、おむつの中におしっこできたのね、でもこれからはママ、おしっこ出たよとか言うのよ、でも今日は偉いわね、1人でおむつにおしっこできたものね」
本当の赤ちゃんであればおしっこが出ると泣いてママを呼び、トイレでできれば偉いのであるが、赤ちゃんとして扱われてる大人の和夫にとってはおむつの中にするほうが偉いのであった。変な話と思いつつ、急所を拭かれ、シッカロールをあてられていると、急に急所が大きくなってきた。
「ま、かずおちゃんたらおちんちんが大きくなって。女の子だからこれとってしまいましょうか」
光江は上機嫌でそんなことまで言い出したが、それは約束違反だ。すなわち人の体を傷つけるという犯罪なのだから。光江は手際よく、和夫のおむつを交換すると今度はスカートではなくロンパースを着せた。
「さ、赤ちゃんのおむつ交換終了。だいぶ赤ちゃんらしくなったわね。順調順調。さ、すき焼きを食べましょう」

 

 
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