あかちゃん

寿司屋では今日の買い物の内容については話をしなかった。和夫もばつの悪い質問の仕方にあえてその話題は触れなかった。
寿司屋から帰ると光江は風呂の支度に行った。
「20分くらいで沸くから最初に入って、それまではテレビでも見ていて」
「はいよ」と和夫はこれから起きることにはなにも考えていなかった。
光江は別室で今日買ってきたものを袋からだしてはやっと私のあかちゃんができる。夢がかなうわと考えては買ってきたものをならべていた。
「お風呂入りましたよ」
「はいはい」と言いながらほろ酔い気分で風呂に行った。
和夫が風呂に入るのを見極めてから、光江は風呂場の脱衣場に行き、和夫の下着から洋服からすべてを取りさった。貴重品だけはポケットからぬきさり別室の部屋の隅に置いた。和夫の下着と洋服は洗濯機に入れ、洗剤を入れ、洗濯機のスイッチを入れた。脱衣場にはバスタオルだけを置き和夫に声をかけた。
「新しい服があるから、ここにはバスタオルだけ置いておくわね、あなたの下着と洋服は洗濯機にかけておきますから、貴重品は大事にとってありましから、心配しないでね」
和夫は光江が以外と世話焼きタイプの女性で嫁にするにはいいなあ、などどと考えながら、
「はいはい」と返事をした。
和夫の所持品はたいしたことない。1万程度の現金と期限がもう少しで切れる定期券、それとクレジットカード位だ。あとで確認すればいいと思い、多少ぬるめの湯船でぼーとしていた。
バスタオル一枚で出てきた和夫が出てきた。
「やー今日買ってきたものだね」
と和夫はいろいろなものを眺めた。
「俺の着るものはどこにあるの」
「かずおちゃん、私のお願い聞いてくれるわよね」
「ちゃんと約束しただろ、結婚、金、法律違反以外ならなんでもいいよって」
「うれしい」
「お願いの前に少し涼しくなってきたよ、着るものはどこにあるの」
「さっき、言ったように着ていた下着と洋服は今洗濯中よ」
「いや、これから着るもの、パジャマみたいなものあるかな」
光江は答えず、光江のお願いの内容を言うのは今しかないと思った。
「かずおちゃん、私ね、あかちゃんがほしいの」
「だから、言ったでしょう、結婚してあかちゃんというお願いはだめだよって」
「わかっているわ、私もあかちゃんを生んで育てることは諦めたの、でもあかちゃんをあやしたいのよ、あかちゃんのようにおむつを取り替えたり、ミルクをあげたり、それから出ないとは思うけど母乳をあげたいのよ。そういう行為が私の夢なの」
和夫は光江の過去は知らないが、あかちゃんができなくなった体から来るあかちゃんをあやしたいという欲望なのだろうと女ココロを理解したような気がした。
「でも、俺はあかちゃんではないし、俺にできることだったらしてあげるよ」
「うれしい」
「でも今の君の夢の内容からすると俺にできることは難しいなあ」
「そんなことないわよ、私のお願いというのは和夫ちゃんにあかちゃんになって欲しいの」
「俺があかちゃん?!」
そのとき和夫はリストラのことを思いだし、エロ本屋で見たアカチャンの世界を思いだしていた。本当はリストラのこともなにもかも言ってしまい、アカチャンのように甘えたい。
しかし、和夫も男だ。そこまではできない。
「さあ、オムツカバーとかロンパースは今日買ってきた布地でこれから私が作りますからね、でも裁縫学校を良い成績で卒業しても1日や2日は時間がかかるから、今日は紙おむつで我慢してね」
「紙おむつって、これはいや、確認はしていないけど君の病気の母親がいると勘違いしてそういうものだと思っていたんだ」
「その話しはおしまいにしてバスタトルをとって、ここに紙おむつを広げるからここに座ってちょうだいね、かずおちゃん、いい子ねー」
光江はもうその気になって和夫をあかちゃん扱いし始めた。
和夫は面食らったが、ここで男の急所とけつの穴を見られおむつをされるなど、さあお願いしますとはいかない。本音としてはリストラの恐怖から抜け出てあかちゃんのように甘えたい。でも男として、はいそうですかとあかちゃんにはなりきれない
「お願いの内容はわかったけど、これは異常な世界だよ、早くおれの着るものを出してくれよ」
「うそつき、人間はみんなおむつをして育ってきたのよ、みんなしてきたものよ。それから病院へいけばおむつなどあたりまえよ、大の男だってしているのよ、もちろん健康な人には用がないかもしれないけどパンツが少し分厚くなったと思えばいいでしょう、お願いよ」
さらに光江は続ける。
「結婚、お金、法律違反、この3つはだめでしょう。当たり前よね。でも私のお願いはあなたのこの3つ以外の要求ということでぜんぜん問題ないでしょう、そして私の体を抱いたのでしょう」
とうとうの女の殺し文句が始まったと和夫は思った。このままだと光江は半狂乱になるような雰囲気であった。いや、過去の光江の結婚暦やあかちゃんへの思いなどを考慮すれば当然の気持ちなのだが、今はそれを知る良しも無い。和夫は本当はあかちゃんのようにされたいのだが素直にできない、しかし、このような状況で仕方なくということであれば光江の言うとおりにしてやろうかという気持ちが沸いてきていた。もともとそういう気持ちがあったこともこの高ぶりに貢献しているのもかもしれない。
「わかったよ、やればいいんだろう」
自分の気持ちとは裏腹にやけの気持ちでとうとう言ってしまった。
「うれしい、かずおチャンは私のあかちゃんよ、さあ、紙おむつでごわごわするかもしれないけど、ここに紙おむつをこうして広げましょうね」
光江は紙おむつを自分の目の前に広げた。
「かずおちゃん、ここにお座りしてね、そうそうその前にバスタオルはもういらないでしょう」
光江は和夫がしていたバスタトルはさっと取ってしまった。和夫は反射神経的に急所を押さえた。
「さ、お手手をどけてね、あかちゃんはそんなことしないのよ、恥ずかしくないのよ」
光江は和夫の手を取って急所からはずした。
「さ、ここに座りなさい、お尻をこの紙おむつのここに置くのよ」
もう光江はすっかりママさん気分である。
和夫は手を引かれて紙おむつの上に座らせそうになるが、踏ん切りがつかない。
まだ、男の急所を丸出しにして正座をしている光江の前で呆然としている。
「さーじらさないで、ママはいいかげんに怒るわよ、お座り、お尻をこの紙おむつのここに置くの」
さっきより、言葉の調子に怒りが込められてきた。
「せーの、さーここよ」
光江は子供を叱るときのように女としては力を振り絞って和夫の手を思いきり手前に引いた。
和夫は思わず前によろけ、光江の言う通りの紙おむつの位置にしりもちをつくような感覚で座ってしまった。
「さーいい子ね、今度はそこにあお向けに寝なさい。」
和夫はとうとう紙おむつのうえに座ってしまったという気分からもうどうにでもなれ、という気持ち、そしてその気持ちとは裏腹に、あーあかちゃんになって甘えられるという気持ちで一杯だった。
和夫はあお向けに寝ると、光江は和夫の足を少し横に開いた。
「おむつかぶれが無いようにシッカロールをぬりますからね」
光江は和夫の両足首をあげて、あかちゃんのようにシッカロールを塗りたいのだが、和夫は大人である。さすがに和夫の両足を持ち上げることはできない。
光江は和夫の急所の近辺にシッカロールを塗り始めた。無論男の急所をつまみその近辺に真っ白くなるようにシッカロールを降った。和夫の急所はだんだんと大きくなっていたが、光江はかまわない。
「かずおちゃんのちんちん大きくなったわね、次はお尻にシッカロールよ、さー、両足を上に上げて」
和夫はもう、素直に従った。光江が握った両足を上にあげた。
「はい、そのままよ、今、お尻に塗りますからね」
光江は和夫の急所から肛門にかけて、そしてお尻全体にもシッカロールをぬった。
「さー、いい子だったわね、足を下げてもいいわよ、シッカロールをぬったからパッチンとおむつをはめましょうね」
光江は和夫の紙おむつを丁寧に閉じていく。
和夫は男の急所、お尻から急所に至る部分に紙おむつがあたる感覚に酔っていた。俺はとうとうおむつを当てられあかちゃんになってしまった。そして感覚だけではなく、それを確かめるために自分の下腹部を見つめた。そこにはまぎれもない紙おむつが自分にあてられている光景があった。
感覚だけではなく、目でも確かめた和夫は彷彿としてしまった。
 

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