再就職

(リストラだ、私は赤ちゃんになりたい)

男の急所を握られて、和夫は急に光江に女を感じた。和夫は起きあがり、光江を押し倒し、唇を重ねた。しばらくして光江はなにかを思いだしたように起きあがった。
「待って、いいことを思いついたわよ」
和夫はまたかと思ったが、自分の格好が女を抱くような格好ではなく、急所も萎えてしまった。
「月曜日からはとりあえず行くところはないのでしょう」
「アパートに帰るよ」
「そうじゃなくて会社にはいく必要がないものね、かずおちゃん、この店で働いてくれない。そうすればいつでも私のあかちゃんになってもらえるし。それにおむつ交換は、1人ではできないだろうから、ここに一緒に住みましょう。アパートもいらないでしょう」
「でも、この店でなにをやるの」
「最初は皿洗い、飲み物の用意なんか、それから簡単な料理ならできるでしょう。そして勉強して調理師の資格をとってよ」
「調理師か。。。」
再就職が決まらない日時が長引くにつれて和夫にもなにか手に職をという考えはあったのが、具体的には浮かんでこなかった。それが、光江のひらめきでなにかできそうな気がしてきたのだ。しかし、そのときには光江の今言ったおむつ交換は1人ではできないでしょうと言う言葉は頭に無かった。
自分の手に職がつく、そしてアパートもひき払えばなんとか生活していける。ここは光江の好意に甘えたほうがよいのだろうか。和夫は悩んだあげく言った。
「ここにお世話になっていいかい?」
「もちろんよ、かずおちゃん、大好き」
2人は1人の男と女になってお互いを抱きしめた。
 

 
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