おむつへの入り口

芥川秀一

和也と恵子のトイレに行く、行かない、いや、和也は恥ずかしくて行けなかったのだが、そのやり取りは数分位続いた。和也の尿意はもう限界だ。
「何よ、和也、トイレに行きたくないの?お姉ちゃんが一緒に行ってあげるから、ね、行きましょう。今の和也のセーラー服姿なら、女性トイレに入っても何も問題ないわよ」
和也は本当にもう泣きたくなる寸前だった。このまま自分一人で家に帰るという手もあるが、ショッピングセンターのかなり奥まで来ている。家までは10分から15分位かかる。それにまた恵子の言うことを聞かないと、恵子から痴漢扱いをされると思うと、自分で勝手に家へ帰る意志は失ってしまう。かと言って尿意は本当に限界だ。
和也はもう動きたくても動けない状態だった。かといってショッピングセンターの廊下の真ん中でお漏らしをしたら、どうなってしまうのだろう。やはり、勇気を出して女性用トイレに入ってすっきりしようか、和也は3階から1階の廊下を見下ろす。そこには、いつもと変わらぬ風景がある。恵子は、「仕方ないわね」という態度で、トイレに行こうとしない和也を見守っている。
「和也、もう残りの買い物をして帰るわよ」
和也はそんな言葉にももう対応できない。尿意は限界だ、でも女性用トイレに行く踏切りがつかない。恵子はとうとう和也の弱みの言葉を発した。
「トイレに行かないなら、痴漢容疑で警察に突き出すわよ」
和也はもう、半べそだった。顔でうなづいて見せると、恐る恐るトイレに向かって歩き始めた。恵子は「早く」と和也の背中を叩くのだった。和也は両手に買ってもらった2つの大きな袋を持っている。バランスを取りながら最初は少しずつ歩いたが、限界の尿意に耐え切れず、少し子走りなって歩く。トイレが近付いてきた。確かに女性用トイレの入り口に行列はない。入り口まで来て男性用トイレに未練を持ちつつも通り過ぎ、女性用トイレに入るために左側に直角に走りながら曲がる。
そのときだった。走りながら曲がった女性用トイレの入り口から小さな幼女がこちらに歩いてきた。幼稚園の年少か年中さんだろうか。おませな格好で歩いてきた幼女とぶつかりそうになった。
「わ、だ、大丈夫?」
和也は両手に持った袋を持ったまま、幼女の両肩を持って衝突を避けようとした。両足を少し広げ、幼女のために少し前かがりになった姿勢は下半身にも力が入る。和也は幼女とぶつかりそうになり、幼女をかばうことで精いっぱいだった。多少、幼女の肩を力強く握ったこと、両手の荷物が幼女の背中に当たったことで和也は幼女をかばうことで頭がいっぱいだった。だが、同時に力が入った下半身は限界を迎えた尿意から一線を越えてしまった。我慢をし続け、限界を超えた尿意から和也は幼女の肩を抱いたままの中腰のまま、おしっこを漏らし始めてしまった。その意識はある。だが、幼女をかばうことで頭がいっぱいの和也はそのままおしっこを止めることはできずにいた。幼女をかばうことに頭が一杯いっぱいの和也は幼女に声をかける。
「だ、大丈夫?」
「大丈夫よ、お姉さんは大丈夫?」
その言葉を聞くと和也は我に返った。ショーツとブルマを濡らし、太ももを伝わって流れ出たおしっこが白いソックスを黄色く染めて、ローファ靴に入り込んだおしっこが溢れでてトイレの床を汚していく。和也は床を見てその現実を認識すると、ようやくおしっこを止めることができた。がそれはほんの一瞬だった。膀胱から尿道を流れていくおしっこは瞬間的に止めることはできても、完全に止めることはできず、またおしっこが漏れていく。たまりに溜まったおしっこは、幼女とのぶつかり寸前のショックで漏れ始め、容易にすぐに止めることはできない。
幼女も床を見ると、和也の靴からあふれ出た黄色いおしっこが床を流れていくのが見えた。幼女はびっくりすると、和也から数歩後ずさりしていく。
「お姉ちゃん、おしっこ間に合わなかったのね。大丈夫よ、おむつをすれば大丈夫だから。私はもうおむつ卒業したけど、お姉ちゃんはおむつしようね。大丈夫だよ」
和也は両足を少し広げ、前かがりの中腰の姿勢のまま、流れていくおしっこを見ていると、本当に涙が少し出てきた。「なさけない」、そう思うと涙が頬を滴り落ちる。
「和也、お漏らしなの?」
そこへ、後ろから追いかけてきた姉の恵子が声をかける。和也と幼女の会話を聞いてしまった恵子は、何が起きたのか理解できていた。恵子は和也をトイレの個室に入れると、床に流れた和也のおしっこをきれいに拭いていく。
「お嬢ちゃん、きれいになりましたよ。妹がおしっこ漏らしてしまったけど、大丈夫だから、けがはないですか?」
「大丈夫よ、お姉ちゃん、おしっこ間に合わなかったから、おむつだね」
そう言うと幼女はスキップしながらトイレから出て行った。恵子は和也の入ったトイレの扉を開く。和也は、両手の荷物を脇に置き、スカートをまくりあげて首で押え、濡れたブルマとショーツを下し、さらに残っていたおしっこをしている最中だった。
和也は、姉と幼女の会話を聞いていた。「おむつ」という言葉を聞いて和也は昔の記憶が思い出されるが、姉が近付いてくる雰囲気を感じると現実に戻る。残っていたおしっこもようやく終了を迎えていた。
「終わった?」
恵子は、残りのおしっこを出し終わった和也に気付くと、和也の靴とハイソックスを脱がし、おしっこ塗れのブルマとショーツも完全に脱がしていくと和也を洋式便器に座らせる。
「スカートは汚れなかったの、大丈夫?」
恵子はトイレットペーパで太ももから下の方向へおしっこを拭いていく。和也の急所はおしっこを漏らした情けなさでダラリとぶら下がっているが、恵子は何も気にしないでおしっこを拭いていく。
以外にもやさしい恵子の言葉にほっとする和也だったが、トイレットペーパで拭くだけでは太ももを流れたおしっこがきれいになる感覚がない。それは恵子も感じていた。
「今、ウェットティッシュを買ってくるから待ってなさい。まだ買ったばかりのショーツを履いてはだめよ。おしっこをきれいにしてからね。だから少しそのままで待ってなさい、わかった?」
和也もそう思う。できることならここでシャワーでも浴びたい気分だが、そうも言っていられない。ウェットティッシュできれいにしてくれるならそれを待ちたいと思う。
「わかった。待ってるから早くしてね」
おしっこをお漏らしして情けない気分の和也は、姉の恵子に素直に甘えたかった。思わず少女言葉を自然に使っている和也だった。
「ちょっと待っててね。すぐ戻るから」
顔を項垂れてスカートを抑えている和也を見ると愛らしく感じる。髪の毛はおかっぱでセーラー服の和也の外見は女の子だったが、その股間には男のあるべきものがある。それは大量のおしっこを漏らした後で、元気なく垂れている。恵子は和也が隠そうともしないその急所をじっと見るとトイレの扉を閉めて出ていった。
「さあ、どうしよう」
恵子はドラックストアでウェットティッシュを購入して和也のおしっこで汚れた下半身をきれいにしてあげるのはもちろんだが、それだけでいいのかを考えていた。歩いて数分のドラックストアでウェットティッシュを探していると、紙おむつが目に飛び込んできた。いろんな紙おむつがある中で、恵子は反射的に大きな小学生でも穿ける女の子用の紙おむつを手にとってみる。
「少し小さいかもしれないけど、これいいかも。花柄のおむつもかわいいし」
恵子は一度お漏らしをした和也が不安だった。家へは歩いて10分強だが、また路上でお漏らしをされたら恥ずかしい。和也におむつを当てればもう、お漏らしの心配はなくなる。恵子はウェットティッシュと女の子用の花柄のおむつを買うとすぐにトイレに戻る。さっきのトイレに近付くとさっきの幼女がまだ、そこに立っていた。
「あ、大きいお姉ちゃん。お漏らしした小さいお姉ちゃんのおむつだね」
幼女は、和也のお漏らしを目の前で見て、和也にはおむつが必要ね、と言ったのを覚えている。恵子が紙おむつのパッケージを持っているのを見つけるとそばに近づいて来たのだった。
「そうよ、今からあの子におむつを当ててくるわね」
「そうだね、私はおむつ卒業したけど、小さいお姉ちゃんはまだ、おむつが必要だね」
「そうね、小さいお姉ちゃんは赤ちゃんね、心配してくれてありがとね」
恵子は幼女とそれなりの相槌を打つと片手に紙オムツのパッケージ、片手にウェットティッシュが入ったビニール袋を持ってトイレに入って行く。
トントン、とトイレをノックし、「お姉ちゃんよ」と声をかけると、トイレのカギはすぐに内側から開けられた。
「お待たせ」
恵子は荷物を置くとすぐにウェットティッシュを開け、和也を立たせる。和也は男の急所を隠したいが、スカートを持っているので隠せない。恵子はむき出しの弟の急所を気にもせずウェットティッシュで拭いていく。急所、股の間、肛門、太ももから足足首に向けて拭いていく。
「姉さん、そこは自分でやるよ」
「いいから、スカートを押さえてなさい。おしっこをきれいに拭きとらないとおむつ被れになっちゃうわよ。さ、今度は後ろを向いて。お尻を拭くから」
和也はスカートを両手で押さえながらゆっくりと後ろを向く。すぐさま恵子はお尻ももちろん、肛門から股の奥まで拭こうとする。
「ほら、少し中腰になって。股の奥が拭けないわよ」
「自分でやるよ」
「いいから、早くしなさい。拭けないわよ。言う事聞けないの?」
恵子がそう言うのと同時だった。「バシ」と和也のお尻を恵子は思い切り叩いた。
「痛い、何するの」
和也はそうは言っても思いがけないお尻へのビンタに面くらい、腰を落とさざるを得なかった。恵子はまた和也の肛門から股にかけておしっこを拭いていく。
「ああ、きれいになって少し気分がよくなった」
「そうでしょ。素直になりなさい」
和也はおしっこ塗れの下半身がきれいになっていくと少し気分が楽になる。急所、肛門や股の奥まで恵子にきれいにしてもらうと恥ずかしい気持ちでいっぱいだったが、お漏らししたおしっこをきれいにしてもらうのは気持ちがいい。恵子はおしっこ拭きが終わると紙おむつのパッケージを開ける。
「それは、何?」
「女の子用の紙おむつよ」
「何に使うの?」
「何って?和也のおむつでしょ。お漏らししたのでしょ。仕方ないでしょ、オトイレに間に合わないでお漏らししてしまったのだから、おむつを当てないと困るでしょ。さっき、ぶつかりそうになった幼稚園の幼女から言われたでしょ。お漏らしする子はおむつを当てるのよ。赤ちゃんに戻りましょうね」
「いいよ、いらない」
そう言いながら後ずさりしたい和也だが、狭いトイレではほとんど動けない。恵子は和也の右足を上げるとパンツ式の紙おむつを和也の足から穿かせようとする。
「さ、もう、怒るわよ」
すごく怒った目つきで睨まれると和也はそう姉の言う通りにするしかなかった。恐る恐る足を上げると恵子は要領よく紙おむつを穿かせていく。
「少し小さいわね、でも我慢してね。また、お漏らししたら大変だから。もうスカートを下ろしてもいいわよ。それでさっき買ったハイソックスと新しい靴を履いて」
恵子はトイレのドアを開けると、おしっこで汚れた和也のショーツ、ブルマ、ハイソックスと靴をビニール袋に包む。和也は新しいハイソックスと靴を履いていくが、お尻を包む紙おむつの感覚を感じている。やさしく急所とお尻を包み股の間に存在するおむつが和也の下半身を刺激する。
「すいません、もう終りますから」
トイレには2人ほど並んでいた。長い時間トイレを占有していたことへのお詫びの言葉を残すと、和也に「早く」という視線を投げる。
「妹がお漏らししてしまって。もう終りましたから」
恵子は準備のできた和也の手を取るとトイレから出させようとするが、和也はお漏らしをした妹などと言われてしまうと、恥ずかしくてトイレから出にくい。
「さ、行くわよ。荷物持って」
いつまでもここにいるわけにも行かないし、下半身をさらけ出していた和也はもう、次の尿意が襲っていることに気付き、恐る恐るトイレから出る。トイレから出て2名の待っている人の視線を感じると和也は下を向いたまま、足早のトイレから出て行った。トイレの順番を待っている人はお漏らしをしたという言葉できっと、幼女がお漏らしをしたのだろうと想像していたはずだ。だが、トイレから出てきたのはセーラー姿の和也だった。言葉なくじっと和也が立ち去るのを見つめていたのだった。
「もう、家に帰りましょうね」
恵子は元気のない和也に声をかけると、ゆっくり家に向かって歩いていく。和也も歩き始めるが、紙おむつがすれてしまい、余計に紙おむつを下半身に感じてしまう。それでもゆっくり歩いて行くが、トイレでの下半身丸出しの時間がおびき寄せた厳しい尿意とも戦い始めていた。そんなおむつを当てられた感覚と厳しい尿意は和也の数年前までの記憶を蘇えさせる。
 

大人の赤ちゃん返り
inserted by FC2 system