“懐むつ”と“見せむつ”

「和也、ほらあの布おむつ懐かしいやろ」
きれいに畳んである布おむつが居間の隅に置いてある。和也はそれを見るとまたおねしょとおむつの記憶が蘇える。栃木県の田舎においてきたはずの思い出は思い出すと恥ずかしい。
「恵子の古着や靴や小物も皆送ったわ。もう捨ててもいいと思ったけど、こういう使い道が出てくるとは思ってなかったわ」
「ええ、みんな和也にあげるわ。女の子は毎日服を替えなきゃだめよ。わかってる?」
「ああ、わかったよ」
「それから和也、今日から布おむつだよ。またお漏らしが始まったし、今度は昼間からだろ、これだけじゃおむつが足りないから追加注文しておいたから。またあの医者のところに相談に行って、前と同じサイズのおむつを余計に注文したわよ」
「母さん、もうおねしょはしないから」
「だって、和也、毎日お漏らしでおむつを濡らしているって本当なんだろう」
「それはそうだけど、女性用トイレは恥ずかしいから」
「じゃ、母さんの言う通りにこれから布おむつを当てなさい。布おむつだとおむつ離れが早いから」
和也はもうこんな会話は聞きたくないと自分の部屋に戻る。自分でスカートを捲ってみるとそこには股を包んでいる紙おむつがある。今度は布おむつか、おねしょをしていた時は確かに柔らかい布おむつだったな。でも、昼間からはだめだ。濡れて漏れたら大変だ。
「母さん、あの銀座で買ったガーターベルトは母さんが使ってるの?」
「やだ、もうガーターベルトする歳じゃないわ。いえ、和也のためにいいかなって思ってときどき家で眺めてたのよ」
「だから和也の何のためにいいの?」
「そうね、まだまとまらないのよ、イメージだけはあるんだけど」
「じゃ、イメージが固まったら教えてね、絶対よ」
恵子は意味ありげな芳江の言葉が気にかかる。芳江が何を考えているかのかよくわからない。聞いてもはっきりしないし。もう少し時間を置いたほうがよい。
「和也、お風呂に入りなさい」
夕飯を食べて少しすると三村家は風呂に入るのが習慣になっている。しばらくすると和也が、行ってくる、と言って風呂に入る。芳江は、準備しなきゃと隅に置いてある布おむつを準備し始めた。いつの間に準備したのか芳江はおねしょシーツを居間に敷く。そこに和也が当てていた懐かしいおむつカバーを広げて敷くと、その上に布おむつを重ねていく。
「恵子、懐かしいでしょう」
「そうね、私も和也に布おむつを何回も当ててあげたわよね」
「懐かしいおむつね」
「懐かしいおむつ、略して“なつむつ“なんちゃって」
恵子と芳江は思わずこの言葉に笑う。そこへ何も知らない和也が風呂から出てくる。恵子はいつものように和也が脱いだおむつや洋服を全て脱衣所から片づけてあるので、和也バスタオル1枚を腰に巻いて歩いてくる。
「ねえさん、着替えは?」
「和也が一人でできるようになるまでは毎日着替えは手伝ってあげるから」
「和也、懐むつを準備してあるわよ」
「なつむつ?夏ミカンはまだ早いし、なつむつって何?」
「これよ」
芳江はおねしょシーツの上にきれいに準備してある布おむつを指さす。和也は居間に戻ってからすぐに異様な光景が目に入っていたが、見て見ぬ振りをしていた。芳江は懐かしい和也の布おむつやおねしょのことを話し出すが、和也は少しずつ体が冷えてくるのでどうでもよかった。
「母さん、早く当ててあげないと和也風引くわ」
「そうね、懐むつしようね、和也」
芳江は少し痛んだ白い医療用おむつカバーを広げると、その上に布おむつを水平に3枚重ねる。そして今度は垂直方向に同じく3枚の布おむつを重ねる。そして和也のバスタオルを取り上げると和也をおむつの上に座らせようとする。和也は懐かしい過去のおむつを見ていると、過去の記憶が鮮明になってくるのが分かる。その記憶は和也のおむつへの抵抗心を和らげてしまう。恵子にも手を引かれおむつの上に座ると、さ、横に寝て、懐むつ当てましょうね、懐かしいおむつでしょ、と優しい言葉が連続すると和也は昔のように芳江と恵子の言いなりになってしまう。
「和也、懐むつはどう?やっぱり紙おむつはよりごわごわしてなくていいだろう、懐かしいだろう?明日からの大学へも懐むつを当てて行きなさい。母さんが当ててあげるから」
「やだよ、おむつだけでも恥ずかしいのに、布おむつだったら、嵩張って目立つし、それにもし、漏らしたら垂れてきちゃうよ」
「そうね、母さん、大学へ行く時は紙おむつにしてあげたら」
「そうかい、じゃそうしようか。家に帰ってきたら濡れた紙おむつを懐むつにしてあげるね」
この時ばかりは恵子は和也の味方をしてくれて和也もほっとする。ほっとすると改めて布おむつの柔らかさを実感することができる。そして懐かしい布おむつの感じを味わえる。恵子はここ数日と同じようにネグリジェを着させると髪の毛をドライヤで乾かしながら髪の毛をブラシッシングしていく。
「ネグリジェもいいけど、変に大人らしいわね。もっと短いあの何て言ったっけ」
「ベビードール?」
「そうそれ、あれもセクシーだけどかわいくない?」
「いいけど、ベビードールは少し短いし、下着みたいでしょ。寝巻としはネグリジェでいいと思うわ。パジャマはおむつを替える時に大変でしょ」
「そうだね」
恵子は、和也の髪の毛のブラッシングを終えると、カールを始める。和也のおかっぱの髪の毛は軽く内側にカールする内巻きがすごくよく似合う。芳江はまた別のことを思い出しで話しだす。
「そうそう、明日の朝に追加のおむつとおむつカバーが届くから。和也の昔のおねしょはどういう訳か週に1回だったろ。でも今は毎日じゃないか。だから毎日あてて、雨が降ったりしても洗濯が間に合うように追加を注文しておいたのよ」
「この医療用のおむつカバーね。でも地味なおむつカバーね。如何にも老人や病人があてるおむつっていう感じでかわいくないわね、女の子の和也のおむつには似合わないけど、仕方ないものね」
「そうね、何かいい方法ないかしらね、作ってあげようかしら。でも時間かかるわね」
「母さん、洋裁うまいから。でも簡単にするならこのおむつカバーにアップリケを付けるとか、レースでお飾りやリボンを付けたりだったらすぐにできるわよ」
「そうね、そうしようかしら。あのショッピングセンターの中に服飾アイテムのお店があったわよね」
「あるわよ、有名なユザワヤが入ってるわ」
恵子と芳江のいつ終わるとも分からない会話に和也は嫌気が指す。自分が当てられるおむつのことだから余計に気が滅入る。取りあえず姉さんの味方で昼間から布おむつを当てられることは避けられた。しかし明日からは母さんも家に居る。この先どうなるのだろうと思うと和也は不安に思う。和也はさっきのベビードールという言葉が気になっていた。頭の中にどんなものなかイメージは着くが見てみたい。和也は自分の部屋に戻りインターネットでベビードールを参照すると色とりどりでいろんなデザインのベビードールを見ることができる。和也はまた左手を股間に伸ばしてしごき始める。慰めながらいろんなベビードールを見ていると思わず白い液体が発射する。いつもならティシュを探すがもうしない。白い液体はおむつの中に発射された。発射してから和也は気付く。今日は布おむつだったことを。だがそんなことはどうでもよくなった。和也は眠りに落ちていく。

翌朝は芳江が和也を起こしに来た。芳江は布団を捲りネグリジェを捲りおむつカバーから手を入れる。また、白いのを漏らしたのね、と言っておむつをベッドの上で替えようとするが、芳江は昨日の会話を覚えていてパンツ式の紙おむつなら、起きて着替えてからにするわ、と言う。恵子に代わって芳江が和也の髪の毛を整え、ブラジャーを付けさせ恵子の古着から選んだワンピースを着させると布おむつを外し、パンツ式の紙おむつを穿かせる。
「朝ご飯にしましょう」
恵子と芳江の3人で朝ごはんを食べる。炊きたてのご飯に味噌汁、アジの干物の日本の朝食は美味しい。恵子は忙しく食べ終わると、母さん、今日の和也の支度をお願いね、と言い自分の部屋へと戻る。和也はいつものように新聞を読む。読むと言っても朝のテレビ番組をちらちら見たりして、目についた記事しか読まない。
「母さん、今日は木曜日よね、私少し早目に行くわね」
恵子は毎週木曜日の朝は会社で朝の用事があるらしくいつも早目に家を出ていく。芳江は恵子が出かけるのを玄関まで送りに行く。和也はチャンスと思い、トイレへ行く。パンツ式紙おむつだから脱ぐのも穿くのも簡単だ。チャンスという表現は適切ではないかもしれない。芳江の居る前でトイレに行こうとすると芳江から何か言われそうで和也は不安だったのだ。トイレで小と大の用を足すとすっきりする。今日は午前中だけの授業だから昼飯を食べたら帰れる。そうすれば大学からの帰り道で漏らすことはないだろう。和也は少しうれしくなる。和也は居間に戻る。
「和也、トイレに行ってたの?」
「そうだよ」
「和也はおむつを当てた赤ちゃんだからいつでもお漏らししていいのよ、わかった?」
「トイレでするよ」
芳江は仕方ないわね、という顔で和也に近寄ると髪の毛を整え始めた。軽く化粧をすると手に持っていた茶色のリボンを髪の毛に付けようとする。芳江は手鏡で和也に見させると、今日はこのリボン付けて行きなさい、と言う。今までの恵子のやり方とは違う芳江の支度の仕方も満更ではない。だが、和也はさっきの芳江の言葉が気に入らない。だから、何か素直になれないが、芳江はリボンを和也の髪の毛に固定してしまう。
「母さん、要らないよ」
「かわいいわよ、洋服も髪型も毎日替えて行かなきゃだめよ、わかった」
和也は自分の手でリボンを確認し、取ろうと思うがやり方が分からない。リボンのあちらこちらを弄くりながら最終的には引っ張ろうとする和也に芳江が、こら、と肩を強く叩く。
「せっかく付けてあげたのに、かわいい女の子の髪型にしてあげたのに、どうするつもり」
突然の芳江の強い口調の言葉に和也は思わず手を止める。いつも優しい母親の態度や言葉と接してきたはずが、突然の芳江のきびしい言葉は和也に素直さを目覚めさせる。
「そうよ、そのままでいいのよ」
和也は初めての髪の毛に付けられたリボンに恥ずかしさを感じながらも大きくはないので、目立つものではないと自分を説得していく。
「今日は大学でお昼を食べたら帰ってくるのね?」
「そうだよ」
「そろそろ、宅急便が届くと思うから楽しみにして帰って来なさい」
和也は昨日の夜の会話を思い出す。追加の布おむつのことだ。それが届くと毎日の夜に布おむつを当てられることになる。でも布でも紙でもいいやと思う。今の状態では当面おむつから逃げられそうもない。いや、逃げる方法を考えなくてはいけないと思う。そうお漏らしをしなければいいだけの話だ。分かってはいるが今までの成り行きは少しの間は我慢しようと思う。
和也が出かけて間もなくして宅配便が着く。芳江は注文した内容を確認する。20枚入りの布おむつが3個、おむつカバーも3個。お古と合わせればカバーは4個あるし、これで洗濯をしていけば毎日しても足りるわね、と思う。布おぬつは白が基本の色で薄い青の花柄と熊さんの模様の2種類、赤い金魚模様が1種類だ。おむつカバーは医療用はブルーが基本だが、ブルーは医療用という感じが強いので白いカバーにした。デザインや種類は多いは訳ではなく1種類しかない。和也のサイズに合わせれば後は選択の余地はなかった。
芳江は部屋の中を掃除して洗濯をする。普段は栃木の家で自分だけの1人分だが、今日は3人分だ。久しぶりの家事の仕事を懐かしくもありやりがいも感じていた。お店は通常朝10時開店だ。芳江は10時少し前に家を出ると開店と同時にショッピングセンターに入る。目当てのユザワヤを見つけると早速赤い花柄レースと黄色いリボン風のレースを見つけた。買い物かごにそのレースを入れるとアップリケを探す。可愛い赤いウサギの大と小の2つを選ぶ。まず1つをこれで付けてみよう。うまくいくと思うが1個のおむつカバーに付けてみてから、残りの分を買いにいくとする。
芳江は家に帰ると、早速和也の無味感想な白い医療用おむつカバーに装飾を始める。
まずはうさぎの大きなアップリケをおむつカバーの後の部分に付ける。前の部分には小さなアップリケを付ける。次に2cm幅の赤いレースを横縞に付けて行く。同じく2cm位の間隔を開けてさらに赤いレースを付けて行く。アップリケの部分は避けながらおむつカバーの前部分と後部分に付けていく。かわいいわ、女の子の見せパンにもなるし、女性のガードル見たいにもなる。もっともウサギのアップリケが子供らしさを演出している。
おむつカバーはこれで完成だ。次は布おむつだ。布おむつを当てておむつカバーを当てるとどうしても太もものあたりにおむつがはみ出てしまう。お漏らしがあった場合に濡れたおむつがおむつカバーの外に出ていると布おむつがおしっこを浸透して漏れてきてしまう。そのため通常はおむつカバーを当てた後ははみ出たおむつをおむつカバーの中に押し込む。芳江は和也が赤ちゃんの頃からそうしてきたし、今大学生の和也におむつを当てる時もそうしている。だが、今回は布おむつの1枚を手に取ると丁度おむつを当てたときにはみ出てしまう部分に黄色いレースを付けてみた。長方形の布おむつの長い部分の両端の中央30cm位だ。こうすればおむつを当てた時におむつがはみ出てもきれいな黄色いレースがはみ出る。全ての布おむつにレースを付ける必要はない。布おむつを5枚当てるのであればその内1枚にレースが付いていればいい。レース付きのおむつを一番外側にして、残りは1cm位内側になるように中央に寄せておむつを必要枚数重ねていけばいい。
「さ、できた」
気がつくと1時だった。まごまごしていると和也が帰ってくる。芳江はお昼ご飯も食べていないことに気付くと簡単に昼食を済ませた。食後のお茶を啜り一息着いた時に玄関から和也の、ただ今、という声が聞こえてくる。芳江は急いで和也を出迎えに行く。
「ただ今」
「おかえりなさい、和也、いいものを見せてあげるからちょっとこっちに来なさい」
芳江は強引に和也の手を取り、居間へと誘導する。和也は面くらった。この数日は家に帰れば少し紙おむつの中にチビリながらも我慢していたおしっこを出すために一目散にトイレに入り放尿するのが日課だった。だが、今日は母が家で待っていてすぐに居間へと連れて行かれる。居間には、芳江が装飾したかわいいおむつカバーが鎮座していた。芳江は色気のない医療用のおむつカバーにアップリケを着け、赤いレースの横縞に付けたこと、おむつカバーからはみ出てしまうおむつは無理に隠さず見えても良いようにその部分に黄色いレースを着けたことを延々と説明する。和也はきれいになった医療用おむつに感激しながらも溜まりに溜まった尿意と戦いながら芳江の話しを立ったまま聞いている。芳江は座ってかわいくなったおむつを手に取って説明している。芳江は和也にも座って手に取って触ってみなさい、と和也の手を引っ張る。和也は丁度中腰のようになるまで手を引っ張られ体の重心を失いかける。
「ああ」
小さな和也のため息に芳江は気付かず、自分が装飾したおむつを説明している。和也は目を閉じ、口を少し開けたまま漏らし始めた。止まりそうにもない勢いのいいおしっこが出ているのを止められない。女の子用のおむつカバーで少しチビッテいたおむつはその勢いのいい大量のおしっこを吸収しきれず、少しずつ太ももを伝わって流れ始める。女の子用なので男の急所から出始めたおしっこは十分に吸収されずにさらに漏れ始める。
「ポタ、ポタ」
芳江は和也の体の方から聞こえてくる音に気付き、和也の様子がおかしいことに気付く。和也はまだ、目を閉じて口を少し開けてため息をついている。
「あら、大変、おしっこ漏れちゃったのね。大丈夫よ、今きれいにしてあげるから」
芳江は怒りもせず、やさしく和也のお漏らしを受けとめる。芳江は布おむつを手にとると床に漏れたおしっこを拭き、和也の太ももから滴り落ちるおしっこもきれいに拭いていく。
「もう、終わったかな」
和也は恥ずかしがりながら素直に首を縦に振る。いくら言い訳をしても母親の目の前でお漏らしをしてしまったことが悲しい。それでも反論せざるを得ない。和也の目から涙が滲み出る。
「ずっとトイレを我慢して帰ってきたのに、すぐにトイレに行きたかったのに、母さんが引っ張るから」
「いいのよ、和也は赤ちゃんなんだから。女の子の赤ちゃんに戻ったのだからいいのよ。もう大丈夫よ。きれいきれいしましょうね」
芳江は今まで説明していたおむつカバーを広げ、その上にレースを付けた布おむつを敷く。その上に普通の布おむつを4枚重ねて新しいおむつの準備を終える。芳江は和也のプリッツスカートを捲ると和也の手で押さえさせる。紙おむつをずり下ろすと。プーン、とアンモニアの臭いがする。
「くちゃい、くちゃいね、でも大丈夫よ、ね、そのままにしててね」
芳江は赤ちゃん用のお尻拭きで丁寧におしっこを拭いていく。太ももや足はもちろん、和也の急所もそして股を開けさせ、お尻も肛門もきれいにしていく。
「さ、きれいになりましたよ。じゃ、新しいおむつよ、ほら、かわいいでしょ、きれいでしょう」
芳江はセットした布おむつの上に和也を座らせる。和也は母親の目の前でお漏らしをしてしまった罪悪感と情けない気持ちで芳江の誘導に身を任せる。だが芳江はすぐには新しいおむつを当てようとはしない。徐に手を和也の急所に伸ばすと先端の皮の部分をつまんでお尻側へと急所を折り曲げる。そして和也の股を閉じさせる。
「こうすると本当の女の子の股間みたいね」
和也は驚いて自分の股間を覗き込む。そこには見慣れた自分の急所がない。目には見えないが、股間の中に挟んであることは感じられるので安心する。股を開くとまた元のように急所が現れる。
「そうね、すこし股を開けば元通りよね。難しいわね」
芳江は何とか和也の急所を後に折り曲げたままで固定させる方法はないものかと考えていたが、何回やってもそれは固定されない。ガーターベルトが利用できないいかと買ってはみたが、利用方法のイメージが湧いてこない。芳江は赤いレースとアップリケで装飾した布おむつを和也に当て始める。懐かしい布おむつの柔らかい感触がお尻と股を包んでいく。固定するためのホックをパチ、パチと音と立て終わるとおむつが当てが完成する。
「さ、立って見てごらんなさい、きれいよ」
和也は立ち上がり、姿見の前に行くとスカートを捲りあげる。そこには味気ない医療用のおむつカバーのイメージはなく、かわいいうさぎのアップリケと赤いレースで着飾ったおむつ姿がある。おむつカバーの脇からは黄色いレースがはみ出て白いおむつカバーを赤と黄色のレースがデコレーションしている。
「後姿もかわいいわよ」
和也はスカートを捲りあげたまま後姿を映す。そこには大きなウサギのアップリケがお尻の部分にあり、同じく赤いレースがゴージャスに白いおむつカバーと調和している。
「かわいいわ、きれいよ、ぴったりね。本当に見せても良いおむつね。昨日の懐かしいおむつが「懐むつ」のように、今日の和也のおむつは見せてもいいおむつ、略して見せむつね」
和也も確かにきれいでかわいいおむつと思う。小学校6年生から当てられた医療用おむつのイメージは全くなくなり、まるで女性用のきれいなショーツやガードルのように見える。だが、おむつはそういう下着とは違い、うっすらと膨らみ、外から見れば中に布おむつが当てられていることが分かる。それでも和也は今までのイメージとは違うことに感激した。
「母さん、きれいだね」
和也は正面を向いたり後を見たりして満足するとスカートを下ろす。芳江も満足だった。実際に和也に装飾したおむつカバーを当てるまでは内心不安だったのだ。
「よかったわ、この調子で残りの2枚のおむつカバーもきれいにしましょう。だからショッピングセンターに行くわよ。「見せむつ」で買い物にいきましょう」
「今、大学から帰ったばかりだから」
「そうね、じゃ10分後に行くわよ。次のおむつカバーをどんなデザインにするか話しましょうよ、一緒に選んでね。それからそのままおむつを当てたままでいくのよ。少し歩いても大丈夫かどうか確かめたいし」
「このままで行くの?」
「そうよ、10分後ね。それともっともっと短いスカートにしておむつを見てもらおうかしら。見せむつなんだから」
「かあさん、怒るよ」
和也は布おむつを当てたままで外出したことなどない。紙おむつを当てたままの外出はもう慣れたが、布おむつは少しかさ張っているので心配だ。正直行きたくないが、次のオムツカバーのデザインとおむつを当てたまま歩いたときの確認をするという目的を言われた以上、芳江には逆らえそうにない。和也はバッグを持つと自分の部屋へ戻る。
10分後、芳江は和也の背中を押すようにして玄関を出る。次のデザインのことを考えているのかいろんな案を次から次へ話してくる。エレベータでロビーに降り、マンションから出ても芳江の話しは止まらない。
お台場の空気は少し潮の香りがする。そんな情緒も芳江は感じないのか、デザインの案を話し続ける。
「和也、何かいい案ないの」
「そうだね、水玉模様とか」
「そうね、でももう少しかわいいのがいいわね、そう小さい模様が散りばめているのがいいのなら、たとえばイチゴのアップリケをおむつカバーにたくさん付けるのはどう?布おむつには葉っぱをイメージして緑色のレースを付けて上げる。それからもうひとつはそうね、ピンクのレースで小さな花を結んだものをたくさん付けてあげる。そうねまず全体に白いレースで覆ってその上に小さなリボン花を散りばめて上げる。布おむつだから葉っぱの緑のイメージね、それでいきましょう」
芳江は一人で興奮してデザインを決めてしまう。和也は正直それほど凝ったものを想像できないが、今当てているのが赤いレースの横縞おむつカバーと黄色のレースがはみ出た布おむつ、だからイチゴや花もいいと思う。
ユザワヤに入ると芳江は決めたデザインに基づいて素材を探す。デザインを決めていても実際のたくさんの素材を見ていると迷うものだ。それでも芳江はイメージに合う素材が見つかるとカゴに入れて行く。
「さ、早く会計して家に帰りましょう。おむつは大丈夫、擦れたり落ちてきたりしない?」
「大丈夫だよ」
買い物を済ますとマンションまでまた歩いて帰る。マンションのすぐ目の前まで来ると、お台場幼稚園と書かれているマイクロバスが和也たちを追い抜かしていく。そのマイクロバスにはミナが乗っている。
「あ、おむつのお姉ちゃんだ」
ミナは小声で言う。ミナは和也が当てているおむつが気になって仕方ない。今日はどんなおむつを当てているのだろう。自分が教えて上げたセーラームーンか、赤い花柄か、それとも他のおむつかと思うと、早くバスから降りたくて仕方ない。和也のスカートを捲ってはママから怒られるが、それよりも和也のおむつの方に興味がある。また、怒られるけど構わないわ、とミナは思う。
バスは歩いている和也たちを追い抜かし、マンション前で園児たちを降ろし始める。そのマンションでは5人の園児が乗り降りする。それぞれの親の元に園児たちが揃うといつもの挨拶だ。
「さよなら」
と言い合いながら先生、親、園児たちが揃って手を振る。そしてバスが行ってしまうと、それぞれに挨拶しながら別れて行く。ミナもママと手を繋ぎマンションに向かって歩き始めるがその前には和也たちが歩いていた。ミナはママの手を振り切り和也の後から近付くと、和也のスカートを捲る。
「キャア」
後ろから突然にスカートを捲られた和也は思わず、本当の女の子のような声を出す。そして周囲の親や園児たちの視線を感じると思わず両手を目で隠す仕草をするの精一杯だった。
「あ、きれいなおむつ」
ミナは今まで見たこともないおむつに感激した。紙おむつとは違いゴージャスに装飾されたそして少し膨らみのある下半身を覆っている物はミナにもおむつカバーと判断できた。ミナのママは急いでミナに近づき和也のスカートを元に戻す。
「ミナ、そんなことをしてはダメって言ったでしょ」
「大丈夫ですよ、ミナちゃん」
芳江は幼いミナの頭をなでながら慰める。慰めてほしいのは和也の方だ、と思いながらも和也はミナを睨みつけるが、ミナはママにくっ付いて和也の方を見ない。
「本当に何度も何度もとんでもないことを致しまして申し訳ありません。十分に説得させますので」
「いいんですよ」
「あの、20階の三村さんでしたよね。10階の杉山です。今度是非お詫びのために伺ってもいいでしょうか。本当になんどもなんどもハシタナイことを致しまして申し訳ありません」
ママのお詫びとは逆にミナはまだママに体を付けたまま、顔も見せない。杉山の強いお詫び訪問の要望についに芳江も訪問を受け入れる。具体的な日時は恵子の都合もあるからと後で電話をもらうことにした。
その夜、芳江は今日の出来事を恵子に話す。きれいに装飾したおむつの事、そしてミナによる再度のスカート捲りの事件のこと。恵子は頬笑みながら話しを聞いていると電話が鳴る。最近は携帯があれば家電を引かない家庭も多いが芳江の希望で家電を引いたのだった。恵子は芳江とあらかじめ決めていたのか杉山の訪問を土曜日の3時と約束する。
 

大人の赤ちゃん返り
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