303エイト
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1 樹賀 綾目(キガ アヤメ)は東京の有名進学高校の3年生。暑い初夏の中、連夜の徹夜をして1学期の中間試験を終えた。まあまあの点を取れただろうと心配しながらやるだけの事はやったと思っている。自己満足に浸りながら家に着いて人眠りしようとした矢先だった。 「綾目!綾目、どうしたの。お腹へっているでしょ。寝るのは少しでもお昼ご飯を食べてからにしなさい」 綾目にはその声はもはや届いていなかった。家の中のリビングのソファで座るようにして横になるとそのまま気を失った。母親がアヤメ!と叫びながらおろおろしている姿も分らないまま綾目はその場に倒れ込んだまま動かくなった。 どのくらいの時間が経ったのだろう。綾目は目を覚ました。目を開けるとそこには見たことも無い家の風景がある。異様に大きいのだ。見るものすべての日常品が自分以上に大きいのだ。それは逆に言えば自分の体が異様に小さいことが分る。ここはどこ、と声を出しても返事はない。綾目は自分には大きすぎるソファの上に居ることに気付いた。ソファやテーブルなど目に入る物はすべて普通の家のように見えるが何もかもが大きい。 その時だった。小学生くらいの女の子とその母親と思われる大人の話声が聞こえてきた。玄関らしき方向から聞こえてくる。 「今日の夕飯はカレーライスだから一緒に作ろうか」 話声がすぐ近くで聞こえてきた。その体も異様に大きい。綾目はすぐに隠れようとしたがソファの上では隠れる場所もない。 「あ、可愛い人形だ。ママ、あの人形どうしたの」 「え、人形みたいだけど生きているみたいね」 ママは綾目に近づき綾目を手で抱いて上にあげた。綾目はすごく強い力に抵抗もできずにママの手にしっかり捕まるしかなかった。 「ほら、マドカ、お人形みたいだけど生きている人間ね。どっから来たのかしら」 「小さいお人形さん、あなたのお名前は」 綾目はびくびくしながら小さな声で綾目、と答えた。話すこともできると知るとママとマドカは綾目のことをじろじろと見る。 「綾目さん、どっから来たの」 「分りません、家でソファに座ろうとしたら気を失ったみたいで。それでここはどこですか」 「どこって、東京にある私たちの家よ。ここは地球にある日本よ」 「そうですか、それでは今は何年ですか?」 「今は3038年かな。綾目さんは何年に生きていたの?」 「2014年ですけど、ここは3038年ですか?千年も未来なのですか」 「正確には1024年先かな。切りのいい1000年ではなくて1024年後というのはコンピュータの初歩数学に関係しているみたいね。綾目さんは2014年に生きていたとするち、それがなぜここに居るのかしら」 「分りません。どうしたらいいのだろう。家に帰して」 「帰してと言われてもどうしたらいいか私たちにも分らないわ。しばらく一緒に暮らしましょう。マドカ、面倒見てあげてね」 「はーい。お人形さんみたいで可愛い。私の部屋で暮らしてもいいでしょ」 「ええ、いいわよ。綾目さんの体に似合ったベッドや家具が丁度あるじゃない」 「そうだリカチャン人形のお家だ」 マドカは嬉しそうに自分の部屋へ行くとリカチャン人形用のベッドとソファを持って戻ってきた。 「綾目さん、このベッドで寝てくださいね」 「はい、ありがとうございます」 「このソファでくつろいでください。ママ、お家はどうしようか」 「そうね、リカチャン人形用のお家もあるけどあれは屋根も壁もないから綾目ちゃんが一人で歩き回ると危ないわね」 「そうだよ、鍵のかかるお家がないと困るよ。マドカが小学校に行っている間は面倒見れないし、ママもパートでお家に居ない時間があるでしょ。どうしたらいいかな」 ママは綾目のお家のなるような物を考えていると閃いた。右手を上に上げて左手にパチンと音を立てて叩くとマドカに楽しそうに答える。 「前にインコのピーちゃんの籠があったわよね。あれに鍵を付ければいいお家になるわ」 「ママ、すごい良いこと考えるね。籠はどこにしまったの」 綾目は鳥の籠に入れられようとしていることを察すると逃げたくなった。とはいえ大きなソファの上では逃げる場所もないし、ソファから床に飛び降りて逃げるには3階から飛び降りるような高さがある。ソファの手すりを上って逃げようとしても手すりに登れるような高さではない。どうすることもできないままそのままでいるとママが鳥かごを持って来た。 「マドカちゃん、綾目ちゃんのお家を作りましょうね」 ママは鳥籠の籠を外すとえさ入れや水飲みの入れ物を退けるとリカチャン人形用のベッドとソファを置く。 「綾目ちゃんはいくつなの」 「私高校3年生の18才です」 「そう、じゃ勉強机も置きましょうね」 「わー、綾目ちゃんのお家が完成したよ、よかったね、綾目ちゃん」 綾目は人形用の家具と一緒に鳥籠の中に住むなんて嫌だと思うが、逃げることはできないし、元の世界へ帰る方法も分らない。 「マドカちゃん、ご飯は一緒に食べてお風呂も一緒に入ってね」 「はーい、綾目ちゃん、一緒に生活しようね」 「鳥籠にはシーツを敷いてね、ほら、本当のお部屋のようでしょ。綾目ちゃん入ってみて」 綾目は仕方なく、鳥籠の中に入ってみる。細い金属の棒がまるで牢屋のように感じられる。これで鍵を閉められたらもう逃げられない。 「マドカちゃん、出かける時と、夜寝る時はこうして鳥籠に鍵をかけてね」 「はーい、鍵はそういう風にかけるのね。分った」 「綾目ちゃんが一人でお家から出たら危ないものね」 「そうよ、じゃ、綾目ちゃんはそのままお家に居てもらって夕飯のカレーライスを一緒に作りましょう。そうだ、リカチャン人形も綾目ちゃんのお家に入れてね。一緒にお話しをしていてね」 マドカはリカチャン人形を鳥籠の中のソファに置くと鳥籠に鍵がかけた。綾目はもう逃げれない。途方にくれたままカレーのおいしそうな匂いにお腹がグーと鳴るのを手で押さえていた。しばらくして、夕飯のカレーが出来て綾目も御馳走になる。 綾目はテーブルの上に人形用の小さな椅子を置かれてそこに座って食べる。カレーライスを小さなお皿に入れてもらって小さなスプーンで食べる。1024年後であってもお米に野菜や肉の入ったカレールーの味は変わっていないようだ。 食事を終えて一段落するとママがテーブルの横にあるスイッチを操作し始めた。 「マドカ、綾目さんを抱いていてくれる。食器を洗うから」 「はーい」 マドカはいつものことのように返事をするが、綾目はマドカに抱きかかえられてママも椅子に座ったままで食器を洗うと言う。綾目がマドカに抱きかかえられたことを確認するとママはスイッチを操作した。 するとテーブルの上の食器が食べ残しも含めてテーブルの底にゆっくりと下がっていく。食器がテーブルの中に格納されるとテーブル内で横に移動しているようだ。次の瞬間には食器がなくなったテーブルの底が上がって来た。すると静かなモータ音と水の音が微かに聞こえる。 「すいません、これは何ですか」 「何ですかって食器洗い機がきれいに洗っているのよ。綾目さんの時代にはないの?」 「食器洗い機というのはテレビで見たことはありますけど家にはありませんでした。それに私の時はキッチンの流し台の所に置かれていたと思いますけど」 「そう、1024年も経つと変るのね。食器洗い機とテーブルが一体になっていれば見ての通りで楽ちんでしょ」 「そうですね」 綾目は食器を洗っていると思われる微かなモータ音と水の音に耳をそばだてた。 「マドカ、綾目ちゃんと一緒にお風呂に入ってらっしゃい。もう沸いているわよ」 食事後のくつろぎの後、綾目はマドカと一緒にお風呂に入った。お風呂の浴槽もまるでプールのようにでかい。この家に居たら一人ではなにもできないことを嫌というほど思い知らされる。それは分るが本当の家に帰る方法は分らない。悩んでいると綾目は尿意を感じた。大きな家に大きな人と接して緊張がずっと続いていたが、夕飯を御馳走になり風呂に入れてもらって気分がほぐれるとかなり強い尿意を感じた。 「あのトイレを貸してください」 「マドカ、綾目ちゃんを抱っこしておしっこをさせてあげて」 「そんな、嫌です」 「マドカちゃんが嫌なら、私がさせてあげましょうか」 「そういうことじゃなくて」 綾目は別の人に抱っこされておしっこをするなんてプライドが許さなかった。 「だって一人じゃ、便器の中に落ちてしまうわよ。綾目ちゃんよりずっと大きな便器だから」 「分りました。大丈夫です」 綾目はおしっこを我慢することに決めた。高校3年生にもなって抱き抱えられておしっこするなど恥ずかしくてできない。 「おしっこは出さなきゃだめよ」 「今は出ませんから」 「仕方ないわね」 ママはそういうとどうしたらいいかを考える。今はトイレに連れて行ってさせてあげることもできるが、留守の間はどうしたらいいだろうと考える。 「マドカちゃん、リカチャン人形のおばあさんが紙おむつをしていたわよね。紙おむつあるかしら」 「うん、あるよ」 「じゃ、綾目ちゃんにはおむつを当てましょう」 「おむつなんて要りません。一人でできますから」 「だから一人じゃトイレにも行けないし、行っても便器に落ちたら大変でしょ。それに私たちがいない間は鳥籠の中でしょ。お部屋でお漏らししたら汚れてしまうでしょう。だから綾目ちゃんにはおむつを当ててもらいましょう。そうすれば安心でしょ」 ママはあたりまえで仕方ないという顔をして綾目におむつを当てることを決めた。マドカにもそのことを説明して約束してしまう。 「マドカ、綾目ちゃんは体も小さいから赤ちゃんのように扱って大事にしましょうね」 「はーい、じゃ、綾目ちゃん、赤ちゃんのようにおむつを当てましょうね」 ママはいきなり綾目の体を掴むと床に寝かせて両手を押さえつけて紙おむつをあててしまう。 「おむつなんて嫌です」 「仕方ないでしょ。分ってね。おむつが済んだらパジャマを着ましょうね」 有無を言わさず綾目に紙おむつを当てて、ママは延々と仕方がないことを繰り返して説明する。 大きな世界では綾目1人では移動できないし、トイレも大きくて行けない。どうしようもないことを理解しつつも下半身に当てられたガサガサの紙おむつを感じると泣きたくなる。それでも元の世界に戻りたい一心の綾目は現状を受け入れた。いろいろな疑問を解決していけば元の世界に戻れるはずよ、と決めると素朴な疑問から始めた。 「すいません、マドカちゃんの身長はどのくらいですか」 綾目は落ち着きながらも大きな世界で暮らす人の身長が知りたくなった。元の世界に帰れるヒントになるかもしれないと思ったのだ。 「私は140センチ、小学5年生よ」 「そうなの?」 綾目は自分はそのままで大きな世界に迷い混んでしまったと思っていたがどうやら綾目自身が小さくなったようだ。リカチャン人形とほぼ同じ位の身長ということは私が20センチ位に縮んだようだ。体だけではなくて着ている洋服も縮んでいるようだ。 「マドカ、綾目ちゃんのパジャマのズボンを脱がせてくれる」 「はーい、大人しくしてくださいね」 綾目は必死に体を動かして抵抗しようとするが、大きなママの両手はピクリともしない。マドカの力もすごく、綾目の力は無視されてパジャマのズボンが脱がされてしまった。 「マドカ、綾目ちゃんのおむつが汚れたらきれいにして替えてあげてね。ちょっと練習してみてくれる」 マドカはおむつを一度外すと、汚れてもいないのにシッカロールを付けて取り出したおむつを器用に綾目にあてていく。 「マドカちゃん、上手ね」 「うん、リカチャン人形と一緒におままごとをしていたときにママから教わったんだよ。リカチャンのおばあさんは寝た切りだからおむつ替えもできるよ」 「そうね、いい子ね。これでいつお漏らししても大丈夫ね。朝はオネショしているかもしれないからきちんと確認してあげてね」 「はーい」 綾目は紙おむつを当てられるとパジャマのズボンも穿かされた。がさがさする紙のおむつの感触が恥ずかしい。 「じゃ、綾目ちゃんをお家に入れて鍵をかけてね。そしてマドカちゃんも歯磨きして寝ましょうね 「はーい、今日から綾目ちゃんと一緒だよ」 ママは綾目を鳥籠に入れるとマドカに鍵をかけさせた。マドカは鍵がかかったことを確認すると鳥籠のすぐ近くに鍵を置いて歯磨きに行ってしまった。 綾目は鳥籠の金属の棒の隙間から手を伸ばした。鍵は手に触るが、それはとても綾目にとっては思い金属の塊だった。 「これじゃ鍵を持つこともできない」 そんなことよりもう我慢の限界のおしっこが漏れてしまいそうだ。あの時抱っこされてもトイレで済ませてくればよかったと思ってももう遅い。さらにおむつを当てられてしまっている。 「あー、もうだめ、出ちゃう」 綾目は鳥籠の中で腰を落とすと膝を抱えておしっこを漏らし始めた。おむつの中に出された暖かい液体が綾目の股を汚していた。 綾目は気を失った後、病院へ救急車で搬送されていた。医師の診断はストレス、過労、睡眠不足により一時的に気を失っただけで問題はないとのことだった。だが、意識が回復するまでは入院ということになっていた。気を失っているため、高校生の綾目の体に紙おむつを当てられるのをはがゆい思いで見つめながら母親は病室に付き添っていた。 「あー、出ちゃう」 綾目が急にそんな言葉を出した。意識が目覚めたのだ。母親は何のことだかわからず夢でもみたのだろうと綾目の顔を覗き込んだ。 「綾目、大丈夫?」 「あ、出ちゃう、出ちゃう、あー出ちゃった」 綾目は目を開けるとそこに母親の姿を確認することができた。綾目は天井や右左の周りを見ると安心した顔になって母親に笑いかけた。 「綾目、大丈夫?」 「うん、大丈夫、ここはどこ?」 「病院よ。あなた気失ってしまって救急車を呼んだのよ」 「すいません、心配かけて」 「気が付いて良かったわ。看護婦さんに連絡するわね。原因はストレスと過労と睡眠不足でしょうって。自立神経失調症とか言っていたけどたいしたことなくて良かったわ。意識が戻るまでは入院と仰っていたけどこれで退院できるわね」 「ええ、そうしたい」 「で、綾目、出ちゃったってどういうこと?変な夢でも見たの?」 「あ、どうしよう」 綾目は今病院のベッドの中でおむつを当てられていることに気付いた。股がかさかさとした感触に包まれていて、そのおむつの中にお漏らししてしまったことに今さらながら気づいた。おしっこをしたことは覚えていたが、それは大きな世界で強制的におむつを当てられて我慢できずにお漏らしたことだった。だが、現実の今、感じるのは放尿したすっきり感と紙おむつが濡れていることだった。 「どうしようって何のこと、まだ何か心配なことがあるの?」 「樹賀 綾目さん、気づかれましたか」 白衣を着た看護婦が駆けつけ来てカーテンを除けて綾目の顔を覗き込んだ。看護婦は気を失った状態からの綾目の回復に笑顔を見せた。 「はい」 綾目はお漏らししたことを母親へは恥ずかしくて言えない。でもだんだんと気持悪くなってくるおむつに看護婦さんに取り替えてもらおうと思うが、母親は帰ろうとはしない。 「母さん、今何時?」 「今は夕方の5時半よ」 「じゃ、もう帰って。私は大丈夫だから。夕飯の支度があるでしょ」 「それはそうだけど、海外にいる父さんにもすぐに連絡しておいたわよ」 「そう、じゃ、もう大丈夫と伝えてきて」 「そうね、もう大丈夫なようね。今日は入院だからゆっくりと寝るのよ」 「ありがと。大丈夫だから」 「じゃ、また明日来るからね。すぐに退院できるから安心してね」 「分った」 母親が立ち去るのを見て5分経ってから綾目はナースコールのボタンを押した。 しばらくするとナースがやってきた。綾目が目を覚ましたことに安心しているのかナースにはあまり緊張感はない。 「どうしました?樹賀 綾目さん」 「あの、おしっこが」 「あ、分りました。今、替えますよ」 ナースはそんなことかと言わんばかりの顔をしてカーテンを引くとおむつ替えの準備を始めた。綾目は自分でパジャマのズボンを脱ごうとして起き上がろうとするとめまいがした。 「樹賀さん、寝たままでいてください。まだ起きなくていいですよ」 「少しめまいがしたようで」 「分りました。安静にして寝ていてください」 ナースは器用に綾目のパジャマのズボンを脱がした。綾目はそっと自分の下半身を見るとそこには薄いピンク色の紙おむつが見えた。思わず恥ずかしくて目を両手でふさいでしまう。 「今、替えますからそのままでいてくださいね」 ナースは綾目の紙おむつを外すと股をきれいに拭いてくれる。吸収されているとはいえ、股がおしっこから解放されてきれいになると綾目も一息つく。 「あの下着にします」 綾目は恐る恐るナースに聞いてみるとナースは毅然とした態度になってきっぱりと断ってくる。 「医師の許可がなければだめです。規則ですので」 有無を言わさずにナースは替えの紙おむつを綾目のお尻の下に入れると手早くおむつを当ててしまった。 綾目は仕方なくなすがままにされ、付けたくもない紙おむつのガサガサ感を感じるしかなかった。 「また、用がありましたら呼んでください」 ナースはそう言うと何もなかったようにベッドから離れていった。綾目は仕方なく目を閉じて深呼吸をするとそのまま寝てしまった。 |
おとなの赤ちゃん返り |